暗い鳥居
投稿者:やうくい (37)
ある日の夕方、ジョンの散歩中、道の真ん中に丸い鏡が落ちていました。
ジョンというのは、犬の名前です。
我が家の犬はとても利口で、日本犬の雑種ですがプライドが高いので、海外っぽくジョンと名付けていました。
今日もジョンはプライドが高く、鏡を一瞥しただけで先に進もうとしましたが
私はなんとなく鏡を拾いました。
さて、何処の物かと周りを見渡すと、右手の方にぼろぼろの赤い鳥居と苔むした石階段を見つけました。
見上げてみると、長い石階段の頂上には神社があるようです。
鏡はひび割れ、かなり汚れた物でしたが、とても綺麗な円形に切られており、まさか神鏡を拾ってしまったのかと青ざめました。
その場に放り出してしまいたくなりましたが、一度持ってしまったものを放り出すと祟りに合いそうだと思った私は、仕方なく神鏡を神社へ返しに行く事にしました。
赤い鳥居をくぐると、突然辺りが静かになりました。先程までは鳥の鳴き声や近くを流れる川の音が聞こえていたのですが。
不思議に思いましたが、気にせず先に進む事にしました。
ジョンを連れて長い階段を登っていき、ようやく頂上の神社に辿り着きました。
そこは異常な空間でした。
生えている全ての木が二股に裂けており、生い茂った葉が日の光を遮っています。
こんな生え方をする木があるのでしょうか。
それに樹皮は爛れ、樹液が滲み出ており
どろどろと流れて根本で固まっています。
こんなに樹液があるのに、虫が一匹も見つからないことも不気味でした。
空気も重たく、吸うたびにどんどん体が重たくなっていく感じがしました。
辺りは石階段の時よりも静まり返り、シーンと音が聞こえるほどです。
ここは生物が居ていい場所ではない、そう感じた私は、ジョンを石階段前のポールに繋ぎ、待っているように伝えました。
ジョンもこの異様な気配を感じているのか不安そうです。
一刻も早く神鏡を戻して帰ろう。
そう決心した私は本殿を探しました。
辺りを見回すと、境内のちょうど真ん中に、真っ黒な柱を使って建てられている鳥居のようなものに、目が引き寄せられました。
鳥居は基本的に入口や出口に置かれるはずですが、なぜか何もない真ん中に、ひとつだけぽつんと建っていました。
鳥居のようなものは歪な形で、左右の柱の高さが違うためか、笠木が大きく傾いています。更に、しめ縄のようなものが掛けられていましたが、よく見ると錆びた太い鎖でした。
しめ縄は、神界と下界を隔てる境界線の役目を持つそうですが、これはどういう目的で掛けられているのでしょうか。
今すぐにでも出て行きたくなりましたが、神鏡を持ち帰ったり、捨てたりした方が酷い目に遭いそうだと思い、本殿らしき建物が見つかったのでそちらに向かいました。
本殿はとても古く、あちこちが苔むし、木が腐って崩れ掛けていました。
中を覗くと座敷になっていたため、流石に土足で上がる勇気はなく、渋々靴を脱いで中に入りました。
本殿内は更に静かで、空気も重たく感じました。
恐怖と息のし辛さで、今にも気を失ってしまいそうになりながら進みます。
畳はじっとりと湿っていて、足を踏み出すたびに足裏が冷たくなるのを感じます。
肌寒いくらいの気温なのにも関わらず、額から汗が流れ落ちました。
私はやっとの思いで神棚に辿りつきました。
ずいぶん長い間放置されていたようで
お皿の上の米と塩は真っ黒です。
榊も枯れ果て、茶色になって埃をかぶっています。
邪気がそうさせたのか、放置していたから邪気が溜まったのか、いずれにせよゾッとする光景です。
私は神鏡を素早く神棚に戻し、飛び出すように本殿を後にしました。
秀逸
怖すぎる
散歩コースなら近所なんやろなぁ!
次行っても見つからないパターンやろか?
犬が無事でほっこりしたw
犬が無事でよかった…
映像化できそうなぐらい良かったです。