呪いの代償

先日、呪いに関するとても興味深いお話を聞く機会があったので、こちらに共有させて頂きます。

私にはオカルト友達がいるのですが、彼は最近会社の上司からいじめを受けています。
上司はかなり嫌な人物で、一度反論してから目を付けられ、半年以上朝礼中に同僚の前でしつこく叱責されたり、長時間の残業を強要されたり、すれ違う時にわざとぶつかられたりしているそうです。社内の人事部に相談しても全く意味がなく、彼は非常に追い詰められていました。

ある日友人から電話が掛かってきて、呪い屋を見つけたから一緒に行ってくれないかと誘われました。相談を受けた際、冗談半分で呪ってやればいいなどと言ってはいましたが、まさか本当にするとは思わず驚きました。
しかし完全紹介制でかなり本格的な呪い屋らしく、非常に興味を惹かれた私は二つ返事で引き受けました。

そして当日、駅で待ち合わせた友人はここ半年ほどのいじめのせいで顔色が悪く、頬もこけてしまっていたのですが、目だけがギラギラと輝いていました。彼は早口でお礼を言うとすぐに向かうことになりました。
呪い屋は駅から割と近いビルの中にあり、10
分ほどで到着しました。エレベーターに乗ってフロアに着くと、呪い師さんが出迎えてくれました。非常に物腰の丁寧な方で、整えられた黒髪に紺のシャツ、黒いスラックスに黒い革靴というシンプルな格好でした。なんというか、あまり印象に残らないようにされている気がしました。今思い出しても顔がはっきりと思い浮かばないです。
案内された室内はがらんとしており、コンクリート剥き出しの床と壁に、接客用のテーブルとソファが置いてあるだけでした。これらには理由があるのですが、後述します。
ペットボトルの緑茶を頂き、相談が始まります。

まずは友人が呪いたい相手とその理由を伝えます。相手は会社の上司で、いじめをされているのに対処できないが、このまま何もせず辞めるのも許せないので呪ってやりたいという内容でした。書き出すとシンプルなのですが、友人が疲れ切った顔で目だけをギラギラとさせながら語る様子は、鬼気迫るものでした。

呪い師さんはひと通り話を聞き終わると、呪いについて教えてくれました。
まず、呪いはやり方も使う力も様々で、どのやり方が正しいというものではないようです。効果さえあるなら本物だということです。
今回伺った呪い屋では、呪炎（じゅえん）という力を用います。呪炎は溜め込んだ恨みを増幅させて変換したもので、縁（えにし）を通して相手に呪炎を送ると害を与えられるそうです。
具体的には、特殊な漢方薬で一時的に呪炎を宿しやすい体にして、繰り返し相手にされた事を思い出す等で恨みを高めて呪炎に変換し、術を使って本人と相手に縁を作り出して呪炎を送りつけるという流れです。
では呪炎は送ったら終わりなのかというと、そんなにうまい話ではないらしく、まず呪炎を宿した時点で自分にも害があるし、送った後も呪炎が消えることはないそうです。
そんなリスクがあるわけなので呪い代行はなく、本人が実行しないといけないと。
そもそも呪炎を宿すこともそんなに簡単ではなく、できないことも多々あるとか。
ここまで聞いた時点で私は利用しようとは思わなくなりましたが、隣にいた友人も同じだったらしく、目のギラギラが消えて憑き物が落ちた表情になっていました。
呪い師さんもそれを察してくれたらしく、今回は呪いの利用はなしということになりました。

相談料は1時間あたりで掛かるので、余った時間で呪い師さんが質問に答えてくれました。
◯呪炎での呪いはどの程度の効果？

→送りつけることに成功すれば病気や事故などでの入院は保証できる。相手が行方不明になった事もある。
◯呪炎を宿した時点で害があるというが、
本人が入院するような事になったら意味がないのではないか？
→呪炎を宿した時点で小動物を使って一部を肩代わりしてもらうので、相手が受けるほどの害はない。ただし体調は確実に悪くなる。
◯呪炎が残った後の生活はどうなる？
→体調が万全に戻る事は二度とない。
基本的にずっと小動物に肩代わりしてもらう事はできないので（やっている人はいる）
毎月形代（かたしろ）を呪い師さんに作って貰って、大きな害は回避する生活になる。
形代での肩代わりをサボると、事故に遭ったりする以外にも呪炎に内側から焼かれて内臓や肌に異常が出る。（胃潰瘍や癌、謎のアザや蕁麻疹、帯状疱疹）
◯縁はどうやって作る？
→呪う相手の一部と、普段から使っているものを用意して術を使う。
◯服装と部屋がシンプルですね
→こういう仕事なので、相手に印象を与えないようにしている。自分の顔がほとんど記憶に残らないのがベスト。呪いに使う部屋とも縁をつくりたくないので内装は全くこだわっていない。