Ｓ地方のこわい夜

いとこの話です。
実家に散々迷惑かけて勘当されて以来、いとこはお金に困っていたらしくて。
それで、過疎地に住むだけで補助金がもらえる村おこしシステムに参加したそうです。

海辺のきれいな庭と家、働かなくて良いし村の人も気さくで最高らしいんですが、
とにかく、夜が怖かったみたいです。
集落から離れているせいか完全な真っ暗闇、波風も不気味で、変な匂いもする。だんだんと孤独感が増して鬱になりそうだったそうです。

それでも他に行く宛ないしそこで暮らしてたんですが
庭先の変なニオイがやっぱり気になって、散策したら木陰に小屋根付きの神棚？らしいのがあったそうです。お供えが古い酢なのか、とにかく臭かったみたいで。

土をかけて悪臭源を埋めといたら、翌日には土がなくなってて。代わりにまた変な臭い液体が供えられる、その繰り返しだったそうです。

普通にこれ嫌がらせだろ！って腹を立てて、証拠をおさえるために夜中、灯り消したまま起きてたら、庭先に人が集まってる音がしたそうです。
スマホでこっそり動画撮影するつもりが慌てたせいでフラッシュ撮影になり、その瞬間皆がこちらを振り返り、さっといなくなりました。
青ざめたいとこは身支度もそこそこに、村から逃げ出すことに。

怖ごわ庭神棚の脇を抜けると、いつも以上に強烈な臭気がして、みたら腐った肉みたいなのが供えられてたと。

もう限界に怖くて、あれだけ揉めてた実家に頭下げて逃げ帰ったらしいです。
あの夜、村の人たちの無表情を見た時に、あの家に住むことで、自分が供物になっていってるような気がしたと。

それ以来、真面目に働くようになったことをいとこの親は喜んでますが、暗い目をしてる気がして少し心配です。