夢の中で女に追いかけられる
投稿者:menyumpahi (2)
私が小学生の頃、奇妙な夢を何度も見た。
当時住んでた実家は古いマンションなんだけど、私はいつも夢の開始は決まって自室のベッドの上で目覚め、現実とまったく同じマンションを舞台に『女』に追いかけらる、といった心臓に悪い夢。
始めてその夢を見たときは怖すぎて夜中に飛び起き、お母さんの布団にもぐり込んだものだ。
何度かその夢を見ていると起きる度に「あれ?今の夢、前に見たような……」と記憶に残るようになった。
そして、その日も私は女に追いかけられる夢を見る。
布団から飛び起きた私は、妙に静寂で心音の無い虚無感を覚えてすぐにここが夢の中だと気づいた。
夢だと言うのに目覚めから始まる矛盾。
夢の中の私はすぐにベッドから起き上がると、カーテンの隙間から向かいのボロいマンションを覗き見る。
向かいのマンションの六階の踊り場、その手すりを掴むように前のめりになった女。
その出で立ちは中身の邪悪さとは真逆に純白のワンピース姿。
純白に不釣り合いなボサボサな長髪が顔を暖簾のように隠している。
そして、女は毎回こう叫ぶ。
『アアアアアアアアアアアッ』
喉が避けて血が噴き出しそうなほどトゲトゲした絶叫。
そのあと、女は狂ったように手すりを叩くと、ワンピースの裾を翻してマンションの階段を全力疾走で降りていくのだ。
そう、女は『私』を目指して走ってくる。
これが夢の絶対的な展開だった。
それを見送った後、同じく全力で家を出るのが私。
どのみち我が家のマンションの一階まで走ったところで絶対にそこで捕まるのはこれまでの夢でわかっていた。
例えるなら女の足の速さは犬と同義。
それも早すぎて引っ掛かりの少ない足場で速度を殺しきれずに余韻を残しながら滑るのも同じだ。
私はここ最近の夢で、まずマンションを出るのではなくて、このマンション内で女を撒くのが正解だと導き出した。
女は基本的に階段を上ってくる。
私の家はマンションの四階にあり、廊下から下を覗き、女がエントランスに侵入した時点でエレベーターのボタンを押す。
エレベーターが到着するのを待っていれば、静まり返った世界に唯一『ペタペタペタッ』と、裸足で階段を駆け上る女の足音が聞こえてくる。
そして、エレベーターが到着して中に乗り込み、扉を閉めた直後に『バン!』と女が扉を外から叩き、中を食い入るように覗く。
ここまではゲームのチュートリアルのように最適化されているものの、ガラス越しにでも張り付いた女の形相は恐怖そのものだった。
女には瞼が無い。
いや、瞼がちぎられたかのように皮膚というか肉の断面や繊維が目の周りに痛々しく残っている。
よほど痛むのか知らないが、血の涙を流しながら『アアアアアアアアッ』と、そこでも叫んでいた。
それ以上に剥き出しの両目が怖くてちびりそうだった。
1本の映画をみた満足感!
↑それな 面白かった映像で見たい
カラダ探しっぽい