上を見るな
投稿者:希侑 (3)
短編
2023/02/15
12:04
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「なんであんな場所で・・・」
高校生の里村さんは、友人から祖母が首を吊って自殺したとの相談を受けた。自殺の原因も不明なのだが、なによりその場所が不可解なのだという。彼女の祖母の家はとても古い木造民家で、便所は母屋ではなく離れにあるそうだ。そして祖母はそこで首を吊った。
「おばあちゃんの家のトイレはとても暗くて、日が暮れるとそれはもう一人で行くのも怖かったくらい」と彼女は言う。
「昔からおばあちゃんが言ってたの。『便器の下は深い穴になってて落ちてしまうと大変だから、用を足すときは必ず下を見ておくのよ』って。ただ、私がトイレに行くたびにそれを言ってたの。それもしつこいくらいに。その様子があまりに真剣だったから、私は怖くて必ず下を見るようにしていたんだけど・・・」
祖母が自殺したあと、彼女は母親からこんな話を聞いたそうだ。
そのトイレでは、同じように祖父が首を吊って亡くなっており、さらにその後しばらくして、その家にいた叔母も同じ場所で首を吊っていた。そんなことがあったにもかかわらず、祖母は建物を解体せずにずっとそのままの状態にしていたのだという。
そして、祖母が縄を掛けた梁は、2人が縄を掛けた場所と全く同じだった。
「もしかしたら、おばあちゃんがあんなに下を見ておけって言ってたのは、私が何かの拍子に上を向くことを防ぎたかったからじゃないのかな。もし私が上を見ていたら、次に死んでいたのは私かもしれない」
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