動画からやってきた女

私は霊感らしい霊感はないのですが、あの場所嫌な感じがするなとか視線を感じるなと思ってそちらを見ると神社やお寺、お墓や石碑があるのを見つけたりします。
あとよくあるのは夢の中に死者を見ることです。とはいってもそれまではなくなる少し前に叔母が明け方の夢に出てきたり、知り合いで亡くなった人があいさつに来たりといった感じの少しほろりとするような体験ばかりでした。

そんな私が二度と見たくなり悪夢を見たのはつい数か月前のことです。
これまでもホラー系の動画が好きでたまに見てはいましたが、コロナが流行り始めて家にいる時間が増えるとあれこれYouTubeで動画を見ることが増えました。
そんな時にそれまで私自身は知らなかったYouTuberに自宅での心霊現象をリポートしているものがあったのです。
複数人で住んでいるそのYouTuberの家はあちらこちらからカメラの向こうの視聴者に視線が飛んでくるのです。
画面の向こうでカメラの向こう側の視聴者をにらみつけるようなねっとりとした視線に私も姿が見えないだろうかと集中してみてしまっていました。

どれだけやっても私は見えるタイプの人間ではないので霊が見えてしまうことは決してありません。見られているなとかの視線に気が付いてもそれだけなのです。

ところが今回はその視線に気が付いてジッと見つめてしまったことがあの恐ろしい悪夢を見る原因になったのです。
その夜は寝る前に彼らの動画を見ていたのですが、やけにその彼らの家のドア付近からの視線が気になった日でした。

いつの間に寝ていて私は夢の中でとある家の中にいました。私の家ではありません。見慣れない家でした。真っ暗な部屋の中を進むと少し先に女性が立っているのが見えます。下を向いて長袖のワンピースを着た女性で髪はうっすらとウェーブしていたようでした。私に背を向けていたその女性はゆっくりと振り返りながら私に近づいてきました。
私にうらめしい思いをぶつけようとするように血走った目の黒っぽい顔をぐーっと近づけてきたのです。夢の中の私はなぜかそれに腹を立てて「なんなんだよ」と切れ気味に女の髪をグイッとひっぱりました。すると女の髪はずるっと頭皮から剝がれてしまいグシャっという感じでずり落ちました。
「ふざけんなこらぁ！」と怒りながら目が覚めるとまだ夜中でした。

起きた私は冬なのにおでこに嫌な汗をかいていました。手には髪をつかんだ時の嫌な感触が残っていて、夢だったとは思いにくい感じがしました。それからしばらく彼らの動画を見るのをやめていたのですが、久しぶりにのぞいてみたときにドアのところにいるのはどうやら女性だということが視聴者同士の情報などでわかりました。よ

くよく考えをめぐらせてみるとあの家はあのYouTuberの家にも似ていたような気がします。彼女は動画を通して気が付いてくれる人のところに今でも出向いているのかもしれません。夢の中で私が怒らなければ彼女に何かされていたのかもと思うと今でもゾッとします。