人がなくなってしまう部屋
投稿者:セブンナイン (1)
私が福祉施設に勤めていた頃の話です。
グループホームで最大で9人まで入所できる施設だったのですが、毎回誰かが入所しても、なかなか居つかない部屋がありました(仮にA部屋とします)。
なぜ居つかないかと言うと、A部屋に入ってもすぐに入院したり、亡くなったりするからです。
A部屋からはときどき、女性の泣くような声が聞かれたり、何もないのに呼び出し音が鳴ったりしていましたが、スタッフは慣れたもので女性の声は配管の音、呼び出し音はベルの誤作動とさぼど気にしていませんでしたし、私もそうでした。
ある日、A部屋に新しい人が入所されました。とても元気な方で、特に身体的な障害などはなく、認知症もそこまで酷くない人でした。
この人なら今度は長く入所しそうだねとスタッフの皆で話し合っていました。
その方が入所してから2週間後に、私が夜勤を担当した日のことでした。
その夜はやたらA部屋からの呼び出し音が多く、私は頻繁に部屋に訪れていました。
入所した本人は全く関与しておらず、すやすやと眠っていました。
こんなに鳴るのは初めてで、私も辟易し、次のミーティングで報告し、新しいものと交換してもらおうと思っていました。
しかし次の日にその方を起こしに言った所、呂律が回っておらず、あきらかに様子が変で、私は慌てて救急車を呼びました。
病院に運ばれ、検査をしたところ脳出血を起こしていたそうで、その方は結局戻ることなく亡くなりました。
頻繁な呼び出し音は、もしかしたらその方を助けようとして何かが鳴らしていたのかもと思うと、気づけなかった事に後悔しました。
脳出血を起こしていたからすやすや眠っていたんですよ。