玉ねぎ小屋
投稿者:守永 (1)
私の地元は、玉ねぎで有名な土地だったので、登下校中や遊びに行く際に、畑の中にある玉ねぎ小屋をよく目にしました。
私は幼いときに、父から玉ねぎ小屋に近づいてはいけない、と言われていました。
なぜ玉ねぎ小屋なんだと思い、その時は面白半分で聞いて、父も特に理由を話そうとはしなかったので、気に留めることはありませんでした。
中学生になり、父から聞いた話も忘れてしまったある日のことです。
帰るのがいつもより遅くなってしまい、急いでいつもの道を自転車で走っていると、いつもの玉ねぎ小屋にぶら下がった玉ねぎの一つ一つがかなり大きい事に気づきました。
地面近くまでぶら下がっていたので、今年はよく育ったんだな、とその時は思いました。
翌日の朝、同じ道を通り、また同じ玉ねぎ小屋を見ると、あの地面までぶら下がっていた玉ねぎが無くなっていました。
あれだけの量がこんなに早くなくなるのか、と驚いたのを今でもよく覚えています。
そのとき、父が言っていた玉ねぎ小屋に近づくな、という話を思い出したので理由を聞いてみよう、と思いました。
その日の夜帰ってきて晩酌をしようとする父に、あの時の玉ねぎ小屋の話の理由はなんだったのか、と聞きました。
最初聞いてもはぐらかす父でしたが、とても大きく、地面に届きそうな玉ねぎがあったが無くなっていたということを話すと、顔色が変わり、青ざめた顔でどこの玉ねぎ小屋かと聞かれました。
場所を伝えると、さらに青ざめた顔で、は説明をしはじめました。
その玉ねぎ小屋は、父親が中学生の頃に、近隣の大学生が連続で首を吊った場所であり、首を吊った学生同士に関係性はなく、全員が自殺であり、聞き込み調査が行われたが動機は発見されず、その事件は未解決のままになっている、とのことでした。
その後、三日三晩悪夢にうなされましたが、一週間もすればそんなことも気にならなくなり、普通に生活に戻りました。
今となっては確認するすべもありませんが、あれは大きな玉ねぎなどではなかったのかもしれません。
現在は地元を離れ東京に住んでいる私ですが、たまに地元に帰るとあの時聞いた父の話を思い出しながら、玉ねぎ小屋を見つめています。
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