かよちゃん

幼いころ、私には「かよちゃん」という友達がいました。
かよちゃんは幼稚園の時からの付き合いで、家も近かったので親同士も仲が良く、いつも一緒に遊んでいたのを覚えています。

小学一年生になった私たちは近くの神社をよく遊び場にしていました。
その日、はじめは普通のかくれんぼをしていました。しかし、二人だけのかくれんぼにすぐに飽きた私たちは、新しい遊びを考えつきました。
「今度は宝物を隠そうよ」
お互いの宝物を交換してそれぞれ隠し、自分の宝物を最初に見つけた方が勝ちという単純明快な遊びです。
私たちは家に戻ってそれぞれ宝物を持ってきました。

私はおもちゃの宝石をたくさんいれた瓶。かよちゃんはクマのぬいぐるみが宝物です。

かよちゃんのぬいぐるみは地面に置くと汚れてしまいそうだったので、賽銭箱の裏側に隠しました。
互いに隠し終わったら一斉に探し始めます。お互いに宝物を隠していたとはいえ、どのあたりにいたかは分かっているのでどこを探せばいいかは分かっていました。
かよちゃんもそうだったのでしょう、スタートの合図とともに本堂の方に行くのが見えました。
すぐに見つかってしまうかも。そう思いながら私は自分の宝物を探しました。
私の宝物はすぐに見つかったので、元の場所に戻りました。しかし、かよちゃんの姿はありません。あたりを探してもどこにも居らず、ぬいぐるみもありませんでした。
家に帰ったのかと思い、かよちゃんの家に行ったのですが、かよちゃんのお母さんは困ったように言いました。

「かよちゃんって、誰？お友達？」

私は母親にもかよちゃんがいなくなったことを話したのですが、同じような反応でした。
かよちゃんのことを伝えると、困惑したように「あの家に子どもはいない」と言います。
それ以来、かよちゃんは姿を消しました。それどころかクラスの友達も、先生も、誰もかよちゃんを覚えていないのです。

かよちゃんはあの神社で消えてしまったのでしょうか？
大人になった今では、かよちゃんが本当にいたのかどうかさえ、自信がなくなっています。
でも、確かにかよちゃんと遊んでいた記憶はありますし、当時はかよちゃんが消えてしまったことがとても恐ろしかったのを覚えています。
あの神社にはそれ以来一度も足を踏み入れていませんし、これからも行くことはないでしょう。