カマキリの顔
投稿者:HeartBeat (2)
私が育った家は小さいですが庭がありました。しかし、家族は草刈りなどの庭仕事があまり得意ではなかったので、いつも草が生い茂っていました。
子どもは外遊びをするのが好きですから、私も例外なく、庭にある梅の木に登ったり、草の中に混じって咲く花を摘んだりして遊んでいました。
その日も簡単な花束を作るために花を摘んでいました。
花のあるところに視線を落としたところ、草花の隙間の地面にあるものが目に入りました。
何となしに、それが一体何かを確かめようと見つめてしまったのですが、そのものがはっきりと何かわかった瞬間、私はその場から後ずさりし、今までに走ったことないのではないかと思うぐらいの速さで家の中に入りました。
きっとその時の私の顔は青ざめていたんだろうと思います。
恐怖で声も出ず、その場から早く立ち去りたいということだけで頭の中は一杯でした。
私が目にしたものは「カマキリの顔」でした。
首ではありません、顔です。
顔の表面以外は無いのです。
獲物となり顔の表面以外食べられたのか、それとも他の何かしらが原因で顔の表面だけが残ったのかわかりませんが…。
三角の形の輪郭に、色を失い、薄っぺらいお面のようなものになってしまったカマキリの顔。
どのようにしたらこのような姿になるのでしょう。
自然の力なのか、それともまた別のものなのか。
それはこれからもずっとわかることはないでしょう。
今でもたまに思い出してしまいますが、カマキリの顔のグロテスクさにはいまだに、身震いをせざるを得ません。
カマキリのメスは交尾後オスを食べてしまうらしいので、その残骸と言うか食べ残しと言うか…だったのでは?