二名様
投稿者:三ツ矢 (1)
私の家の近くにはコーヒーが自慢の喫茶店があります。
ある日私は一人で喫茶店に行きました。家から近く、軽くコーヒーでもと思って寄ったのですが、入店するとお店の方がきて「二名様ですか?」と聞かれました。私は「いえ、一人です。」と言って、店内に案内されました。ここのコーヒーは色々種類があって、おいしいのです。のんびりとコーヒーを飲み、私はくつろぎました。
またある日、私は一人で喫茶店に行きました。なかなか混んでいて、私の前後にもお客さんがいました。入店するとお店の方がきて「二名様ですか?」と聞かれたので、周りにお客さんがいるからだろうと思い「いえ、一人です。」と答えました。店内は混んでいて、私はゆっくりしようと思いましたが混んでいることもあり早めに店を出ました。
さらに後日、私は一人で喫茶店に行きました。この日は平日ということもあり、店内は空いていました。入店すると店員さんがすぐに来て「お客様、一名様ですか?」と声をかけてくださり、「お好きな席にどうぞ。」と言われました。店内は空いていたため窓際の四人掛けのソファ席に座りました。
しばらく待っていると「お冷をお待たせしました。」と先ほどと別の店員さんが来たのですが、「あれ?」と言います。どうしたのかなと私が顔を上げると、「お客様、二名様ではなかったでしょうか?」と言われました。「いえ、一人です。」と答えると、すみませんと言われながら用意された二つのお冷のうち一つを渡されました。不思議に思いながらも、私はコーヒーをゆっくり飲んで、お店を後にしました。
また後日、私は家の近くのネイルサロンに出かけました。道路を挟んで喫茶店の斜め向かいにあるネイルサロンで、最近通いはじめたところです。ネイルサロンで、ネイリストさんに「何か怖い話とかあります?」と話しかけられました。「えっ、そういうの特にないです。ネイリストさんは何かありますか?」と話題を振ると、ネイリストさんはにやりと笑って、「ここ、出るんですよ。」と言いました。
そして意味ありげに壁のほうを見て、「ここ、葬儀場の隣でしょう?時々、迷い込んじゃうみたいで。みんなかえって一人で店じまいするとき、自動ドアが勝手にあくことがあるんですよ。」と言われました。そういえば、と私は顔を上げました。ネイルサロンの隣は、葬儀場がありました。
そして、私が何回も「二名様ですか?」と聞かれた喫茶店は、葬儀場の道路を挟んで向かい側。私はよくこの近くを通りますが、あまり意識したことはありませんでした。改めてその事実に気付いた時、背筋が冷たくなりました。あの時、誰かが私について喫茶店に迷い込んできたのではないか?と。
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