貴賓室の幽霊

横浜中華街にある老舗高級中華料理店で働いていた時のことです。
その店には 貴賓室という部屋がありました。
部屋の形も六角形をしており結婚式や 特に豪華な宴席の開かれる大きめの個室でした。

でも 豪華で明るく大きな窓 煌びやかなシャンデリアのある部屋なのに なぜか長く部屋に居たくはないと思うような感覚がありました。

「この部屋は1人で入っちゃいけないよ、幽霊がいるから」
先輩のウェイター達は よく新人を揶揄っていたのも そんな雰囲気があったからでしょうか
実際 人によりますが その部屋での作業中具合が悪くなるという人は多かったように感じます。

アイドルタイムという 隙間の時間に 貴賓室で椅子を並べて昼寝をしていた先輩が首を絞められたという話もありました。

配膳の仕事というのはかなりの体力勝負、そして接客のお仕事であるので 基本新人は大部屋で団体客相手のお仕事が多いのですが 入って半年ほどした頃から私も貴賓室での宴席の担当になりました。
リーダーの方から
「あなたはあの部屋イケる？」と聞かれて なんの話かなと 首を傾げながら
初めての貴賓室担当の喜びもあり
「頑張ります！」と意気込んで担当になったのをよく覚えています。
貴賓室は妙な噂があるとともに花形のお仕事でもありました。

意気込んで貴賓室に入ると今日は結婚式でした。
前日に配膳の準備は整えてあります。
ウェディングドレスを着た花嫁さんは美しく
お色直しで 中華風の衣装に身を包んだ幸せそうな2人に 心からの拍手を送り
無事式が終わって 片付けの時です
数人で片付けをしていたら
窓も開いていないのに シャンデリアがキラキラと揺れたのです。