夜明け前の電話
投稿者:きーま (8)
10年くらい前のお話になります。当時私は浪人生で、予備校の用意した寮で生活していました。その時もいつも通り課題を済ませて就寝しました。
夢を見ました。
夜道を歩いていると、後ろからワンピースを着た女性がついてきます。携帯が鳴り見てみると、文字制限いっぱいまで「好き好き好き好き好き……」と書かれたメールが届いていたのです。振り向くと女性はまだいます。心なしか笑っているようにも見えました。怖くなった私は寮に向かって走りました。しかしメールはしつこく届きます。逃げても逃げても女性との距離は離れません。
無我夢中でどうにか寮に逃げ切り、ふと後ろを確認すると女性の姿はありませんでした。しかしドアに「どうして見てくれないの」「好きなのに」と乱暴に描き殴られた落書きがありました。
驚いた私は、ハッと目が覚めました。
時計を見ると早朝5時。真冬だったので辺りはまだ真夜中のような暗さでした。「夢か……」とホッとして深呼吸すると、突然携帯が鳴り始めました。「こんな時間に?」と恐る恐る手を伸ばし、電話を手に取ってみました。
「………ふぅぅうううう、わぁぁぁあ!!」
不気味な女性の声、そして突然叫び出したのです。
驚いた私は大きな声で悲鳴を上げ、携帯を思いっきり壁に投げつけました。怖くなった私はそのまま布団にもぐりこみ朝を待ちました。
いつの間にか私は眠ってしまっていたらしく、気がつくと陽の光が出ています。しばらく呆然としながら、電話も含めて全部夢だったのではないか……と思っていました。
不意に携帯を探すと、いつも置いている枕元にありません。辺りを見ると、携帯は床に落ちていました。それは投げつけた壁の下に落ちていたのです。
こんな体験は後にも先にもこの一度きりです。今振り返ってもあれは何だったのか、あの女性は誰だったのか分かりません。
不意に思い出した体験談でした。
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