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不思議体験

きーまさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

おじいちゃんの犬
短編 2022/04/18 18:04 1,008view
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 これは20年くらい前の話。一人暮らしをしていたおじいちゃんが亡くなった。おじいちゃんは肺がんを患っていたが、息子たちとの同居を最後まで拒み、死ぬまで田舎の一軒家で犬と暮らし、最終的に孤独死した。

 おじいちゃんが亡くなったあと、残されたのが柴犬、名前は「ゴン」。ゴンの引き取り先を親戚一同で相談し、一軒家に住んでいた甥っ子のYが渋々引き取ることになった。Yの家は、お嫁さんと二人暮らし、最近新居を建てたばかりだった。

 犬を飼うには良い環境ではあったが、その嫁が動物嫌いであった為、元々室内で飼われていたゴンは庭に建てた犬小屋で暮らすことになった。動物嫌いの嫁は、ゴンの面倒を一切みる気はなく、餌やりや散歩は全てYがやっていた。Yが仕事で遅い日は散歩は勿論、餌ももらえない。

そんな生活を送っているうちに、Yは毎日同じ夢をみるようになった。死んだおじいちゃんが「ゴンを家の中に入れてやってくれ、ごはんをあげてくれ、可愛がってくれ」切実な顔で夢枕に立つ。Yは毎日ゴンのことを考え、仕事中も心配していたが、嫁は頑固にゴンを受け付けない。

そのうち、嫁もYと同じくおじいちゃんの夢をみるようになった。しかし、嫁はおじいちゃんの夢をみるようになったことで、反省して可愛がるどころか、余計にゴンを疎ましく思うようになってきた。そんな夢をみるようになったのはYが夢の話を自分にしたせいだと怒っていた。

 ある台風の夜のことだった。勿論ゴンは外の犬小屋。真夜中にY達の寝室の窓を激しくたたく音「なに?」Yも嫁も驚いて起きた。激しくたたかれる窓。「なに、なに?」そして、耳元ではっきり聞こえた声「ゴンを家に入れてくれ」確かにおじいちゃんの声だった。Yも嫁も確かに聞いた。Yはあわててゴンを玄関に入れ、ゴンの凍えた体をふいてやった。「ゴン、ごめんね。これからは家の中で暮らそうね」Yはそう誓った。しかし、嫁は恐れおののき、泣きじゃくっていた。

 Yの嫁は翌日実家に帰った。その後、精神疾患で入退院を繰り返すことになり、Yとは1年後に離婚した。さらにその数年後Yは犬好きの女性と再婚し、今は幸せに暮らしている。

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コメント(1)
  • ゴンが無事で良かった😫

    2022/04/18/18:10

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