おそろいの命日
投稿者:むいむい (4)
短編
2022/03/31
12:06
906view
私の遠縁の伯父と伯母の話です。
とても仲の良い夫婦で、二人は毎朝近所を散歩するのを日課としていました。
しかしある朝、散歩中に車に跳ねられ、伯父は軽症だったものの、伯母は帰らぬ人となりました。
伯母が亡くなってからしばらく塞ぎ込んでいた伯父。
周囲の献身もあり、事故から半年ほどで、ようやく以前のような元気を取り戻したように見えました。
「あいつとの楽しかった思い出だから」
そう言って日課だった朝の散歩も再開しました。
散歩のルートは以前と同じ。
伯父は伯母が亡くなった道ばたに小さな花瓶を設置し、花を活けました。散歩の旅に手を合わせ、伯母の冥福を祈るのが伯父の新たな日課となったのです。
伯父の様子がおかしくなったのは、伯母の伯母の一周忌が近づいてきた頃でした。
朝散歩に出掛けると、何時間も戻らないのです。
心配して探しに行くと、伯母の亡くなったあの道ばたに、虚ろな表情で佇んでいる。
そんな事が何度も続き、心配した周囲の者が散歩を控えるよう進めましたが、伯父が散歩を止める事はありませんでした。
そして一年前伯母が亡くなった同じ日。同じ時刻、同じあの道で、伯父も車に跳ねられて亡くなりました。
最後まで仲の良い夫婦でした。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 11票
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。