年越しの時に異世界に繋がった話
投稿者:緑のねずみ (2)
大学生になる俺は、その年はちょっと特殊なことをしてみたい気分だった。そこで、小学生の気分に戻って年越しの瞬間を迎えることにした。まず、ポ〇モンの古い時計をつけた。雑誌の懸賞で当てたもので、当時はどこにいくにもはめていたものだ。
それから、できれば服装も当時を再現したかったが、流石にほとんど捨てているので、ランドセルを背負うことにした。まさに変質者だが、そんなことはどうでもいい。どうせ部屋から出ないんだから……と、そこで俺はふと小学生の時に、よく遊びに行っていた公園があることを思い出した。
どうせならそこに行ってしまおうか、小学生気分を再現するし、夜だから誰も見てないだろうし……と、いろいろ考えた末に、公園に足を運ぶことにした。今年の年越しは今年っきりだ。悔いなくやりたかったのだ。
その公園は自転車でも結構距離がある(小学生の頃、家族に車で連れて行ってもらっていたのだ)。俺は二十三時半前に外に出た。ランドセルが非常に窮屈である。
極寒の中をひたすら自転車をこぐと、やがて思い出の公園についた。相変わらず無駄に広い。自然豊かでもある。もちろん誰もいない。度胸試し的な感じで誰かいるかもとも思ったが、そうではなかった。まあ、度胸試しにはもっと相応しい場所があるか。
俺はふと小学生の頃を思い出し、当時毎日のように遊んでいた幼馴染に電話をした。違う高校に行ったせいで、接点はもう電話かラインくらいしかない。3コール目で友人(以下Aとする)が出た。
「おお、久しぶり。電話は二か月ぶりくらい?」
「そうだっけ。てか、あけおめ」
俺が言うと、
「いや、まだはえーよ」
とAは笑いながら返した。こういう、いわゆる阿吽の呼吸がとても心地よい。
それから俺たちはどうでもいい会話をした。街灯の下に移動してポケモンの時計を見ると、もう年越しまであと少しだった。
「そろそろ年越しだな」
「あ、ほんとだ。お互い受験頑張ろうな」
「ま、よゆーだって」
「強がるなって」
「あ、あけおめ!」
どんなタイミングだと思いながら、俺も「あけおめ!」と返した。真っ暗な静かな公園に、俺の声が空しく反響する。が、悪くない。悪くない年越しだった。
「またいつでも電話してな」
「おう」
「それじゃ」
電話が切れた。それからしばらく、俺は公園のベンチで思いに耽っていた。するとラインが来た。Aからだった。
「あけおめ!時間ピッタリだろ?」
謎のドヤ顔感。Aもよくわからないボケをするなあと思っていると、ふと現在の時刻が目に入る。ちょうど零時だった。あれ?
俺は改めて、しっかりと時刻を確認する。が、確かに今、俺は年越しを迎えたらしい。どういうことだ?
「なあ。俺、さっきお前に電話したよな?」
「は?何言ってんだよ。よくわからんボケやな笑」
どうやら、ポケモンの時計はちょっと遅れていたらしい。ま、古いやつだから仕方ないか……。
じゃあ、俺がさっき話していたAは誰だったんだ?
大学生になるってのは受験前ってことかな?
普通は高三の年末年始だよね。
ポケモンの時計がわからないのですが。
ランドセル背負ってポケモン時計して公園で何してたんだろね?