お母さんが見守ってくれてるの?
投稿者:大猫 (1)
付き合ってからしばらく経った頃、Sさんが自宅にAさんを招く機会がありました。
Sさんは実家を出て一人暮らしをしていましたが、そのマンションでも「お母さんの気配」は続いていました。
そのことをAさんに伝えると、Aさんは少し気恥ずかしそうに、
「じゃあ、Sちゃんのお母さんは今も見てるのかな?なんか照れ臭いね。挨拶とかした方がいいかな?」
と言いました。
そして、天井に向かって、
「Sちゃんのお母さん。初めまして、Aと言います。Sちゃんとお付き合いをすることになりました。絶対に幸せにするので、これからよろしくお願いします」
と挨拶をしました。
すると驚くべきことに、まるでAさんの声に応えるかのように、Sさんの机の上にあったペン立てが、ガチャン!と倒れたのです。
Sさんはびっくりして、思わず涙ぐみながら、天井に向かって、
「お母さん?やっぱりお母さんなの?いつも見守っていてくれてありがとう。お母さんなんだよね?」
と叫びました。
そのときです。
Sさんの耳元に、女の声で、
「……不幸に……」
そう囁いた声が聞こえたと思った瞬間、SさんとAさんは同時に気絶してしまいました。
気がつくと、朝になっていました。
そして、Sさんの部屋は、まるで強盗でも入ったかのように本棚や机、ラックの中の物が全て床に落ちて散乱していたそうです。
あまりのことにSさんはパニック状態になってしまい、Aさんになだめられながらなんとか落ち着きましたが、すぐにそのマンションを解約し、逃げるようにAさんの住まいに引っ越しました。
しかし、Aさんの家に引っ越した今でも、突然物が倒れたりノックの音がしたりする奇妙な現象は続いているそうです。
それだけでなく、ふとした瞬間に、SさんやAさんの耳元で女がボソボソと喋る声が聞こえるのだそうです。
「なんて言ってるのかはハッキリ聞き取れないんだけど、多分、“不幸になれ不幸になれ不幸になれ”とか、“なんであんただけ”とか、“お前のせいで私は”とか言ってるんだよね」
この話を教えてくれた時、Sさんはかなりやつれた顔でそう言いました。
夜中でも女のボソボソ声が聞こえて、眠れない日が続いているそうです。
そして、それは明らかに、Sさんのお母さんの声なのだそうです。
そのせいで、Aさんまですっかり参ってしまっていると言います。
「……お母さん、私のことを恨んでいたのかな。私のせいで、何年も苦労して好きなこと何もできないまま死んじゃったから、本当は私とことずっと憎んでいたのかな」
SさんとAさんは、何度か霊能者を頼ってお祓いを頼んだこともあるそうですが、残念ながら効果は全くありませんでした。
❤️幸せを築いてって欲しいと思います。