東北の山村で崇められる石引様

木製の祠でさ、窓みたいなのがぴったり締まってるんだよ。
よくありがちなお札とかは貼ってなかったなぁ。

最初の感想は「なんかショボい」だったんだよ。
石引様～なんていうから、もっとすごいもんだと思ってた。

なんか拍子抜けしちゃってさ、俺は持ってきた石を黙々と積み始めたんだ。
積むっていっても、そんなに綺麗に積まなくてもいい。
賽の河原でもないしな。
崩したところでお咎めはなしだ。

結構俺、へっちゃらだ～って思ったんだよ。
石引様に会えないのは残念だったけど、まぁ別にいいかって。
早く終わらせてゲームでもやろう、そう思って石積んでた。

そしたらさ、急に耳の裏がかゆくなってきたんだ。

ぽしょぽしょぽしょって、何かが聞こえるんだ。
なんか虫の羽音が～とかじゃないんだ。
声がするんだよ。

ぽしょぽしょ、ぽしょぽしょ、ぽしょぽしょ。
呼びかけられてるんじゃないんだよな。
囁かれてるわけでもない。
どこからか音がする。それは絶対に遠くないって、そんな感じ。

最初はビビったけど、別に音がするだけだ。
大人しく石をどんどん積んでいったんだよ。

積めば積むほど音が大きくなるんだ。

ぽしょぽしょがぼよぼよになって、がやがやになるのにそんなに時間はかからなかった。

うるせぇなぁって思って、後ろ振り向いたんだ。
やっぱり誰もいないんだよ。
なんか、ムカムカしてきちゃってさ、思わず「ちっ」って舌打ちしちゃったんだ。

やらかしたって思った。
さすがに俺でも舌打ちが粗相になることくらい分かってた。
やべって思って、反射的に祠を見たんだよ。

祠、開いてたんだ。
正面の窓がぱっかり開いてて、真っ暗な中身が見えてた。
それ見たとき、無意識に、「……あっ」って言っちゃったんだ。
すぐさま口を抑えたよ。