病室の隣のベッドの女の子
投稿者:三番 (1)
これは私が子供の頃に病気で入院していた時のお話です。
喘息を患っていた私は入退院を繰り返していました。
あまりにも何度も入院していたので看護師さんや担当医の先生とは顔見知りになり、入院している間ずっと喋り相手になっていたんです。
しかし、看護師さんも医者の先生も暇ではありません。
喋り相手になってもらえる時間も限定的でした。寂しかったのを覚えています。
そんな寂しさに暮れている時です。
入院していた病室はカーテンで4つに仕切られている部屋だったのですが、カーテンの向こうの隣のベッドに女の子が入院している事に気付きました。
「いつの間に入院してきたんだろう」と不思議に思っていたのですが、なんとその女の子から話しかけてくれてあっと言う間に仲良くなれたのです。
これで寂しさが減る!と小さい頃の私は大喜びしていました。
ただ、その女の子はかなり病気が重いのかたくさんの点滴に繋がれており鼻にも呼吸補助の管が通されており、病室からは出られない状況でした。
私は喘息の発作が出て居なければ、日中は病院内を散歩がてらに歩く事ができたのですが、やはりその時には一人になってしまう為、寂しくなり病室に戻り女の子とお喋りを楽しんでいました。
そんなある時、消灯時間を過ぎた夜の事です。
女の子は寝返りを打った際にベッドから落下してしまったのです。
私は急いでナースコールを女の子の代わりに押して看護師さんを呼びました。
幸いにも女の子に命の別状は無く、その場は事なきを経たのですが、その日からその女の子はベッドの周りのカーテンを閉めたままにしてしまうようになり、顔を見せくれなくなりました。
それでもカーテン越しに話し相手にはなってくれるので今までと変わらずお喋りを楽しんでいました。
顔が見えないままのお喋りをその後約1か月過ごし、ついに私は退院する事になりました。
喘息の発作も薬が無くても出なくなり、元気になったのです。
それが嬉しくてずっと話相手になってくれたその女の子に元気になった事を伝えようと病室に急いで向かいました。
病室に着き、カーテン越しに女の子に「元気になったよ!」大きな声で言った為、看護師さんに叱られます。
しかし、その女の子からの返事がありません。
寝ているのかな?と思い、看護師さんに「あのカーテン開けていい?」と聞くと看護師さんは黙ってうなずきました。
私は久しぶりに女の子の顔が見れる!と意気揚々とカーテンを開けると、そのベッドには女の子はいませんでした。
代わりに白いお花がベッドの脇にある小さいテーブルに備えられていました。
看護師さんにいつから女の子はいなかったのか聞くと、「もうずっと前」と言っていました。
では入院中の私とずっと話し相手になってくれていたあの女の子は誰だったのでしょうか。
どこかで元気にしているのでしょうか。
その答えは誰も教えてくれませんでした。
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