一足の革靴
投稿者:博愛 (1)
わたしがまだ小学生の頃、家の和室で亡くなったおじいちゃんが残してくれた本を寝転がりながら読んでいた時のことでした。
ふと入り口側に人の気配を感じ、親か兄弟かな姿勢についていつも通り言われるかなと言い訳しつつとそちらを見ました。
するとそこには革靴を履いた男の人の足が見えました。足元を見た記憶しかないのですがわたしはその足の持ち主は男の人だとパッと分かりました。
わたしは親や兄弟じゃないと知ると「なーんだ、びびらせやがってー」と本に戻ったのですが、しばらくしてふとおかしいことに気づきました。
父親が革靴を履いたところなど一度も見たことがありませんでしたし、なんならここは外でなく和室です。急に薄寒い物をかんじました。
そして、その話をおばあちゃんにすると少し怯えた顔をして倉庫に行き、一足の靴を持ってきました。わたしはそれも見た時に叫び声をあげそうになりました。それは紛うことなき先ほど見た男性が履いていた靴だったのです。
震える声を隠しつつ、おばあちゃんに「これ、これだよ。わたしみたのこれ!」というと、「これはあなたが見たことないはずなんだけどねぇ」と話し始めました。
要約すると、わたしを大変可愛がってくれていたおじいちゃんのお気に入りの靴で、わたしが生まれた際にも履いてきた靴とのことでした。
見た後も図鑑を読み直したくらいあの足からわたしは悪意を全く感じませんでした。それはその足の持ち主が、自分の本を読んでいる孫を見守るおじいちゃんだったからなのかなと思います。
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