お墓の隣の家
投稿者:海生 (3)
女は薄ら笑い浮かべながら、目をキョロつかせ、声が震えていた。
夫がプレゼントしたであろう、夫が好きなブランドのバッグを必死で握りしめていた。
「何を言ってるのかわかんないです.別に結婚する相手もいるし、呼ばれたから来てるだけ」
「遊びなら、独身同士でやりなさいよ!」
全身黒のファッションで、おかっぱ頭の痩せた不倫相手は、妻の勢いにたじろいでいた。
顔も印象に残らないくらいのブスに、夫を寝取られていたのだ。
彼女は妻としてのプライドをかけてこう言う。
「あんたみたいなのがいるから、家が崩壊すんのよ!人の夫をたらし込んで、若いうちはそれが楽しいだろうけど、いつか恨みで殺されるよ!」
それまで、DVも自分のせいだと責めていた妻は、そこで全て理解した。
夫はこの女を家に入れるために、再婚するために私たちを追い出したのだ。
悔しさと悲しみで爆発しそうになりながら、新しい家に戻ると、子供が出迎えてこう言った。
「前の家にいた、あの女の幽霊がついてきてるよ」
彼女はギョッとした。
子供にどんな霊か聞くと
「全身黒で頭はおかっぱ。顔はよく見えない。でも大丈夫、この人多分いなくなるよ」
まさしく、あの不倫相手のことだ。
あれはきっと生き霊だったんだ、と
ゾッとして聞いていた。
体に塩を撒きながら。
「なんで、いなくなるってわかるの?」
と聞くと
「この家は浄化してくれるから」
と笑顔で答えた。
その後、協議離婚で夫とは直接連絡もなく、淡々と弁護士同士で養育費や財産分与が決まり、終わった。
それなりの財産を手にして、もう大嫌いな夫には二度と会わなかった。
こっそり夫の会社に問い合わせてみたが、例の不倫相手は辞めたようだった。
夫は結局、その女とは再婚できなかったようで、戸籍上は独身のままだった。
いなくなる、というより
その女は単に、家庭持ち男をその気にさせるのが趣味で、責任を取るつもり等ないのだ。
数ヶ月した頃、お墓のお寺でボランティアをするうち、住職家族とも仲良くなり、
この家にも結界を張ってますよ
と教えてくれ
子供がいう
浄化の意味がわかった。
厄を落としてくださってるのだと
感謝していた。
巣篭もり需要