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葛見一錠さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

死後3日目の身元不明遺体
短編 2026/01/02 20:46 103view

 世の中には、機密事項とはまではいかなくとも、なんとなく世間には隠匿されているような現象というものは存在している。これも、そんな自然現象の一つであるという。

 山中で発見された身元不明遺体の回収依頼。実に7年ぶりである。ざっと見た遺体の状態、体長約2mmの第一世代の蛆虫、推定死後3日。念のため身元を洗うための調査はしたが、やはり近隣での失踪の情報は無し、目撃情報も皆無。何より遺体に大きな損壊はなく、はっきりと顔まで判別できるにも拘らず、最終的な調査結果は性別や年齢すら特定のできない身元不明遺体であった。7年前と何も変わらない。こう言ったケースはここからが厄介である。思わず溜息が出てしまうが仕方がない。2人がかりでシートでくるんだ遺体を山頂付近まで運ぶ。ここにはこう言った現象の処理専用の結界がある。くたびれた紐に不均等な間隔で括り付けられている紙垂、このいかにもと言った紐で囲われた一辺3mほどの正方形の空間の中央に作られた、不恰好な神明鳥居。ただの人避けのための形だけのものであるが、これが案外効果的なのだ。最も、最初にこれを設置したのが誰なのかも今となっては知るものは居ないが。囲いを乗り越え鳥居の付近まで移動し、穴を掘る。人1人がすっぽり入るほどの大きさになったら先程運んできた遺体を放り込む。この作業が何を意味するのかも知らないが、山で見つかった身元不明遺体は埋めるものだと、以前からそういうものなのだと、だから埋める。らしい。これで1日目の処理は完了である。

 翌日、昨日身元不明遺体が見つかった場所へと再び赴く。そこには予想通り、昨日と全く同じに見える身元不明遺体があった。推定死後3日目。先日と同じ手順で埋めていく。その翌日以降も3日目、4日目と同じ手順で、これを一週間続ける。最終日までずっと、発見された遺体は死後3日目を保っていた。

 問題が起きたのはその最終日のこと、前日までと同じように遺体を抱え、結界まで出向く。そこで見た光景には目を疑った。見覚えのないスコップ類、飲み残したペットボトル、そして掘り返された穴。遺体は一つも残っていなかった。簡易的な人避けの結界を過信しすぎた結果か。心理的抵抗を植え付けてもどうしても破ろうとする輩は確かに存在する。だがしかし、よりにもよってこのタイミングか。仕方なく今日の遺体は持ち帰り、火葬に回すこととした。山のものを持ち出すことは推奨されない行為であったがこればかりは仕方がない。結界の現状復帰だけ行い、そのまま山を降りた。

 ◯◯市の山中で身元不明遺体発見、死後3日程経っていると見られ、警察は引き続き調査を……そんな文字がネットニュースの見出しを踊っていたのは翌日のことである。ここから少し離れた市で身元不明遺体が見つかった。そりゃそうだと思いながら先程書き上げたばかりの始末書を眺める。にしても世間に見つかるのが先だったか、と多少はこの情報社会を憂いてやるが別に私にはもう関係のないことだ。わざわざ埋めているものを暴くほうが悪い、そんなことをすれば胞子が飛んでしまうに決まっているのだから。

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関連タグ: #山#警察#鳥居
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