誰かが一歩踏み出すと、
全員が同時に動いた。
そのとき、確信した。
――みんな、自分で決めていない。
導きは、命令じゃない。
禁止でもない。
**「選んでいると思わせる配置」**をしているだけだ。
後日、導きの会の前を通った。
ガラス越しに見えたのは、
円形に並んだ椅子と、
その中央に置かれた、何もない空間。
壁には、文字が一行。
「正しさは、すでに在る」
その瞬間、
頭の中で声がした。
――考えなくていい
――選ばなくていい
――導きは、常に先にある
足が、勝手に止まった。
いや、
止まることが“最適解”として提示された。
そのとき初めて分かった。
これは信仰じゃない。
神ですらない。
人間が“自由を使わなくなる”仕組みだ。
今も町は平和だ。
犯罪も減った。
争いもない。
ただ、
誰かが突然いなくなっても、
誰も疑問を持たない。
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 0票


























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。