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呪い・祟り

わかささんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

18の呪い
長編 2025/12/24 23:09 2,689view

第三章 過去編

廃屋を離れ、車に戻ったあと。
夕焼けが、田んぼを赤く染めていた。
沈黙が続く中、
柚奈の母が、ぽつりと言った。
「……ここに来たの、二度目なの」
柚奈が、驚いて振り向く。
「え?」
奈々も、母親を見る。
奈々の母は、小さく頷いた。
「私たちが……
 あなたたちと同じ年頃だった時」
陰陽師は何も言わず、
ただ黙って聞く姿勢を取った。
柚奈の母は、少し笑う。
「私もね、柚奈と同じだった」
「肝が据わってて、
 怖い話が好きで、
 修学旅行では——」
懐かしそうに言う。
「わざと電気を消して、
 みんなを怖がらせてた」
柚奈は、思わず苦笑した。
——確かに、似ている。
「奈々のお父さんとお母さんも、
 当時は一緒だった」
奈々の父が、静かに言う。
「……止め役は、昔から変わらない」
奈々の母が、少しだけ微笑んだ。
「あなたのお母さんは、
 “危ない”って言うと、
 余計に行きたがるタイプだった」
柚奈の母は、肩をすくめる。
「だって、
 立ち入り禁止って書いてあると、
 余計に気になるでしょ?」
その空気が、一瞬だけ和らぐ。
だが——

次の言葉で、すべてが変わった。
「……でも」
奈々の父が、声を落とした。
「一人、違った」
柚奈の母の表情が、固まる。
「A男くん」
その名前に、
奈々の母が目を伏せた。
「私たちの友達だった」
「面白がって、
 一番最初に二階に上がった」
柚奈の喉が、鳴る。
「……その時、
 私たちは——」
柚奈の母は、言葉を探す。
「お祓いなんて、知らなかった」
「18の意味も」
「蝋燭の順番も」
「時間も」
「ただ、“怖い場所”だと思ってた」
奈々の父が、続ける。
「数日後から、
 A男はおかしくなった」
「信号を見落とす」
「道を間違える」
「何度も、同じことを失敗する」
——小事。
柚奈は、陰陽師の話を思い出す。
「でも、誰も本気にしなかった」
柚奈の母は、唇を噛みしめる。
「……私が、一番」
「“気のせい”だって、
 笑ってた」
沈黙。
「18日目」
奈々の母が、震える声で言う。
「……18時過ぎ」
「A男は、

 交差点で——」
それ以上は、言わなかった。
言わなくても、分かった。
「呪いによる、交通事故だった」
柚奈の母は、深く頭を下げる。
「……だから」
顔を上げた時、
その目は、はっきりしていた。
「私は、教えなかった」
「また、
 誰かが面白半分で近づくのが、
 怖かった」
「——でも」
柚奈を見る。
「教えなかったことで、
 同じ場所に連れて行ってしまった」
柚奈は、首を振った。
「……でも、今回は助かった」
奈々も、強く頷く。
「ちゃんと、知った」
陰陽師が、初めて口を開く。
「……あなたたちは、
 同じ体験を、違う結末で終わらせた」
「それが、意味です」
夕暮れの向こう、
廃屋はもう見えない。
柚奈の母は、空を見上げて言った。
「A男にも、
 これで……」
言葉は、続かなかった。
代わりに、
風が、稲を揺らした。
——まるで、
遅すぎた返事のように。
柚奈は、心の中で誓う。
18を、忘れない。
怖がるだけで、終わらせない。
それが、
次の世代に渡すべきものだと——
初めて、はっきり分かった。

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