なんだかその夜は眠れず、朝を迎えました。
告別式はお昼を挟み、午後に掛かる予定でしたので時間はありました。午前九時頃、斎場にはすでに多くの人々の決して喜ばしくは無い喧噪が始まっていました。
こんな早い時刻から火葬をする人もいるのね。などと思っていました。
夫を残し、一人で斎場内を散歩がてら歩いていました。
喪服を着たたくさんの人たちが、火葬場エリアに佇んでいました。順番を待っているのでしょうか。
一人の年配の男性が手に抱えている遺影写真に目が留まりました。
それは、昨晩見た、男の子を追いかけていた若い女性のお顔の写真でした。そしてそのすぐ後ろに佇む若い男性が抱えていた遺影写真は、あの時の、活発に階段を駆け登っていった男の子のものでした。
私はキーンとなにか頭の中で鳴っているような不快な気分になり、慌てて夫のいる部屋に戻りました。
こんなことってあるのでしょうか?
私は夫に叫ぶように、今みてきた事実を話しました。
夫は「へぇー」とか言っていたような気がします。私は夫の他には誰にも言えませんでした。
理由はわかりません。
夫も亡くなりもういません。
なぜか今、唐突に思い出し、このことを誰かに知ってもらいたくて、ここに来てしまいました。
長い話しにお付き合いいただき、恐縮しております。ありがとうございました。
なんだかほっとしました。
了























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