奇々怪々 お知らせ

心霊

嘘猫さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

幽霊談話
長編 2025/09/07 00:12 1,651view

「突然だけどさぁ。幽霊ってなんだと思う?」
「どうしたの?今更そんな事言いだして」
「…そんな質問は先人たちが既に語り尽くしていて、未だに正解が出ていない問題じゃない。私達みたいな女子高生に答えられるとは思わないのだけど」

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ここはとある高校の空き教室。。時刻は22:00

どこか抜けた所があり、基本ぼんやりしている
女子高生の、楓(かえで)
少し口が悪く、その考え方や行動に時代を感じる女子高生の、舞(まい)
どこか生き辛そうな性格をしているオカルト好きな女子高生の、咲(さき)

この3人は、この学校の他の生徒が帰った後、この教室に勝手に集まりお喋りをする事が日課になっている。
この物語は、この3人のなんてことない日常会話である
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「いやさ。気になるじゃん。最近暑いし、学校のテレビつけたらさ、本当にあった怖い話みたいな番組やってるじゃん」
「今は1年に1回だったかしら。私はあんまり好きじゃないけどね。そういうタイプの番組」
「そうかなぁ。結構面白くない?」
「あたしも好きだけどな。結構怖いじゃん」
「…二人のいう、「怖い」ってどういう感情なの?」
「え?幽霊とか出てくるし…それを見て、「怖い」って感じる事じゃねえのか?」
「そんな事、考えたことないけどなぁ」
「例えばお化け屋敷に行ったとするでしょう?そこで感じる恐怖って、まぁお化け屋敷によって変わると思うけれど…どちらかといえば「驚いた」系の怖いじゃない?色んな仕掛けとかキャストとか、視覚的に訴えてくる「怖い」。ジャンプスケアとも言うけど…その方が視聴者にもわかりやすいから、その手の番組でもよく使われてるじゃない」
「ジャン…?なんだって?」

「咲ちゃんは時々難しいこと言うから…」
「要は私は単純な驚かしがあんまり好きじゃないって事。あと一般人が茶々いれるタイプの」
「じゃあ逆に聞くけど、咲は何が好きなんだよ。普段オカルトの話結構してくるじゃん」
「私?私はもう怪談一択よ。短編、長編問わないけど、人間の業とか因縁とか、そこに暮らす人々の想いいとか背景が感じられる様な物語が好きね。」
「お前らしいっちゃらしいけど、そんなの創作にしかねえだろうよ。」
「そんな事ないわよ。昔の時代の話でよくまとまっている話集もあるし」
「でもさぁ、そういう番組にだって幽霊はでてくるよね?咲ちゃんの言ってる、物語に登場する幽霊と何が違うの?」
「…そういえば舞の質問に答えていなかったわね。幽霊とは何か…「人の想いの結晶」だと私は考えているの」
「想いの結晶?」
「えぇ。幽霊が実在するかしないか、という質問に答えることは出来ないけれど、【幽霊と人の感情が無関係だ】と主張する人はあんまりいないのではないかしら?
例えば、巷でよく言われる「幽霊を見た」という現象。幽霊というからには、その当人は既に死んでいるという事でしょう?…まぁ生霊というパターンもあるけれど、話がややこしくなるからその説明はまたの機会にするとして、その幽霊は、なんの為に出現したのかしら。必ず、出現した理由があるはず。例えば、事故で亡くなって無念があるとか、誰かに殺されて恨みを晴らしたいとか…そこにあるのは人の感情だと、私は思うのよ」
「確かに、その番組でも「この部屋で過去に自殺者がでました。その人が幽霊となって…」みたいな事を言っていた気がするなぁ」
「死んだら何も無くなる、という人もいるし、そう思う事は自由だから私は否定しないけど、世の中には化学で解明出来ない現象だってあるし、なにより、この世の中で人の感情を無視する事はできないからね。
非合理的な事だって、感情次第ではやってしまう。それが人間という生き物だから。本当に腹が立つ…思い出したら頭が痛くなってきたわ。
話題を変えましょう。
一つ面白いのは…いや、面白いと言っていいのか解らないけれど、私が思う幽霊…心霊現象の理由としては、故人ではなく、その幽霊の目撃者、第三者の想いが、形になったというパターンもあると思うのよ」
「どういう事だ?」
「考えてみて?ただ幽霊が出現しただけでは、その話は広まらない、第三者に認知されないはずじゃない?それを第三者が知っていると言う事は、必ず目撃者が必要という事よ。その幽霊を見て感じた恐怖…それが広まり、第三者もそれを見たい、もしくはそれを怖いと思う感情がその場所に集約されて、結果として幽霊という現象を成立させる…だから、幽霊と人の感情は切っても切れないと私は思うのよ」
「まぁ…咲の言うことが正しいかは解んねえけど、言ってる事はなんとなく解るな。有名な心霊スポットとかだって、色んな人間が広めてきた訳だし」
「だから私は、幽霊物語を読む時は人の思いを知りたいの。なぜその幽霊はそこに出現したのか。なぜ出現しなきゃいけなかったのか。幽霊となってまで、何をしたいのか。生前、何があったのか…いつか話すけど。現実にはそこに暮らす人々の習慣が怪異となった話も沢山あるからね。そういうのが絡み合った話が好きなの。そういう背景を空想したり、考えたりするの、凄く楽しいと思わない?」
「いや別に。そこまで他人に興味ないし」

「あたしもよく解んないかな…ま、まぁ咲ちゃんらしいというか」
「この気持ちは解らない人には一生解らないわよ。」
「てかお前、いかにも人が好きとかそんな事言ってるけど、本当は」
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3人が話していた、鍵がかかっているはずの
教室の扉を空けて、用務員らしき人が入ってくる
「こら!誰かいるのか!?って誰もいないじゃないか」
真っ暗な教室の電気をつける
「全く…見回りをしていたら生徒の話し声がしたから、何かと思ってきてみたら…幻聴とか勘弁してくれよ。ただでさえこの高校は過去に自殺者が出てんだ。怖いったらありゃしない。早く戻ろう」
電気を消して、教室の鍵を閉め、歩いていく。
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「もうこんな時間かぁ。この後どうする?職員室のテレビでも見るか?」
「私は語りたい事を語る事ができたから満足よ。そう言えば舞、何かいいかけてなかった?」
「いや。なんでもねぇ。咲が気にしてないなら別に」
「何よ」
「そう言えば、ここに来たのはわたしが一番新しいんだよね。咲ちゃんと舞ちゃんはいつからここにいるの?」
「…あたしは随分昔から。咲はもうちょい後からだな。こいつとは結構長い付き合いだから。咲の事は大体知ってるつもり。」
「他にする事もなくて暇なのよね。一人だったら退屈だったから。その点だけはそこそこ感謝してるわ。…まだ朝まで時間あるし、私の知っている怪談、教えてあげる」
「また始まった。はいはい。聞いてやりますよ」
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この3人は、この学校の他の生徒が帰った後、この教室に勝手に集まりお喋りをする事が日課になっている。なお、この高校では、ここ数十年の間に、3人の自殺者がでており、いずれも死因は屋上からの飛び降りである。
この物語は、この3人のなんてことない日常会話である。

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コメント(2)
  • 時間が22時という段階でそういうオチだろうなと思った。

    2025/09/07/19:40
  • 時刻は22時という部分で結末がわかった。

    2025/09/17/16:52

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