もう1人の私

皆さんは、いわゆるドッペルゲンガーの存在を意識したことはありますか？

私自身、オカルトの類を信じていなかった訳ではありませんが、どこか他人事のようにも捉えていました。しかしどうにも不可解な出来事が過去に何度かありました。

それは私が、中学校の教師をやっていた頃のことでした。
最初に勤務していた中学校で、私は吹奏楽部の顧問をしており、校内の空き教室でパート練習をしている部員の様子を見て回っていた時のことでした。2階の廊下の窓から外を眺めている部員数名を見かけたので声をかけると、彼らは驚いた表情で私を見てこう言いました。
「先生、今帰ったんじゃなかったんですか？」
と…。彼らの話によると、ついさっき私が車に乗って帰って行くのをその窓から見ていたそうでした。
しかし当然そんな覚えはありませんし、そもそも当時の私は電車通勤だったので、車が学校にあるわけもないです。

その時はどうせ見間違いだろうと特に気にも留めてませんでしたが、その2年後に別の目撃情報が入って来ました。

その日私は大学時代の友人A,B,Cと合計4人で仕事の終わりに食事の約束をしていました。うちA,Bは日中余裕があったので先に待ち合わせして時間を潰し、夕方に用事があった私はそれを済ませてCを車で拾って合流という段取りでした。
その時、A,Bは私に、
「さっき商店街歩いてたよね？声かけたけど気づかなかった？」
と言ってきました。こちらも、当然そんな覚えは無いし、何だったらアリバイもあります。しかし、A,Bによるとその女性は、容姿だけでなく持ち物や仕草も私そのものだったと…
最初にお話しした吹奏楽部の部員たちと違って、より親密な関係性の友人が至近距離で見てそう主張すると言うのは何ともまあ奇妙な話です。

私に似た女性の目撃情報はこの2件ですが、関係があるかは分からないけど、実はもう1つ、これらと同時期に奇妙なことがありました。

私は当時勤めていた中学校で何人もの生徒から、
「先生、インスタやってるでしょ？」

と言われていました。
確かに私はインスタのアカウントは持っていますが、教師という立場上大っぴらにSNSをするのは気が引けたので、本名からは推測できないニックネームを使い、当然鍵垢にしていました。
しかし、生徒たちの話によると、鍵はかけていないしあろうことかフルネームで自撮りを投稿しているとのこと…

私の名前はそれほど珍しいものではないので、フルネームだけなら同姓同名ということもあり得るでしょう。しかしそれでは、自撮りの件が説明できません。
もちろん加工という手もあります。しかし、その結果本来の私の顔からかけ離れたものが投稿されているのであれば、「先生加工しすぎ！」などと言われていてもおかしくないはずです。それが無いということは、その自撮り写真は多くの生徒から見て私に似ているということになります。

私に似た顔を投稿する私と同じ名前のアカウント…と考えると、何とも気味が悪いです。

以降不可解なことは起こっていませんし、今は仕事も住居も変えています。

ただ、今でもあの街には、私に似た女性が徘徊しているのでしょうか…