寝言を言う友達

妹が中学生の時の話です。
仲の良いDさんという女の子がいました。

同じクラスだったのですが、彼女が修学旅行には行かない、と言うのです。
「え、どうして？　なにか理由でもあるの？」
と、訊いてもDさんは、行かない、ごめんねと言うばかりです。

理由を尋ねても言おうとしないDさんに、妹も腹を立ててしまい、しばらく口を利かない時期があったのですが、妹の方から、
「ごめんね、もう無理に訊いたりしないから仲直りしよう」
と、歩み寄ると、Dさんも、ううん、私が悪いの、と謝ってきて仲直りしました。

「じゃ、妹ちゃんだけに話すね」
そう打ち明けてくれたのですが、

「寝言がヤバい」
ということでした。

「なあんだ、寝言くらい誰だって言うでしょ」
と、妹が笑っても、
「半端じゃないぐらいヤバいの、聞いたら絶対に引かれる」
と言い張ります。

「本当に聞くとびっくりすると思う、みんな絶対に怖がるから」
と、深刻な様子なので、
「じゃあ、一度泊まりに行っていい？　Dちゃんが気にしすぎだけなのかもしれないよ」
と、妹が提案すると、最初は渋っていましたが、DさんもOKしました。

その週の土曜日、妹はDさんの家にお邪魔しました。
彼女のお父さんとお母さんも、ちょっと心配げな様子でした。
「びっくりしないでちょうだいね」
お母さんに言われ、そんなにひどいのかな？　と妹は怪訝に思ったそうです。

Dさんの部屋に布団を敷いてもらい、ふたりで就寝しました。
そして夜中。
Dさんの声で妹は目が覚めました。

ベッドに寝ているDさんが「ねえ、ねえ」と、まるで起きて話しかけているかのように喋っているのです。
これか？　と、妹は布団から起き上がり、ベッドに寝ている彼女の様子を見ました。

確かにDさんは目を閉じているのですが、
「ねえ、ちょっと、あんた、聞こえてるんでしょ、返事しなさいよ、ねえ！」
と、だんだん声を大きくします。