雨の日のベビーカー
投稿者:NoGoM (1)
実家で正月を過ごすことにした。
久しぶりに帰ってきた実家は相変わらず整理されていて、3年前に使っていた自分の部屋はそのままの状態だった。
親や兄弟、従兄弟などが集まり正月らしい時間を過ごした。
夜もふけり、兄弟と従兄弟はそれぞれの家に戻っていく。
「自分も寝るか」と布団に入り、いつものように携帯をいじる。
午前3時を過ぎただろうか、外で猫の群れがミャーミャーと鳴いている。
親は職業柄小さな音で起きるし、ましてや嫌いな猫の鳴き声なら起きてしまうのではないかと心配したが疲れていたのか起きてくることはなかった。
翌日、母に「昨日、猫の鳴き声すごかったね」というと不思議そうな表情で私を見た。
特に気も止めずに昼間は友人と遊び、夜は実家でダラダラして過ごした。
また布団に入り、携帯をいじっていると昨日と同様に猫の声がミャーミャーと聞こえてくる。
実家にいた時にはこんなに鳴いていただろうかと不思議に思うほどに鳴いていた。
また翌日も母にこのことを伝えたが「そんなことなかったわよ。鳴いてたら起きちゃうし、あんた疲れてるんじゃないの?」と軽くあしらわれた。
そんなことないと思うんだけどな、なんて思いながら遊びに行く準備をしていた。
この日は大雨で猫の鳴き声は聞こえてこなかった。
さすがにこんな大雨だったら猫も外に出ないかと思い、なんだか落ち着いた気持ちでウトウトしていた。
何分経ったか分からないが、しばらくするとヒールの音をコツコツと鳴らしベビーカーのタイヤがガラガラ響かせているのが聞こえた。
雨のせいか、寒いせいか分からないが赤ちゃんは大泣きだ。
1階の部屋に寝ている私はなんだか嫌な予感がした。
段々と近づいてくるコツコツとしたヒールの音。
泣き叫ぶ赤ちゃんの声。
次の瞬間、窓をドンドンドンッ!と叩くのだ。
窓と道路の間には小さな庭がある。
しかも簡単な柵まであるから入ってこれるとは思えない。
しかし確実に聞こえてくる叩く音。
怖さに身体が動かない。
叩く音と同時に女性の声が聞こえる。
「助けて。開けて」
2〜3回繰り返した後だろうか、またコツコツと音を鳴らしながら遠のいていく。
「良かった…」
母が言っていた通り、正月で遊び呆けて疲れていたのだろう。
霊感などない私なのだから一種の金縛りのような現象だろう、そう思っていた。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。