猫案内
投稿者:みゃはma- (1)
15年ほど前、私が小学校の低学年だった頃体験した不思議な出来事です。
放課後は近所を探検するのが大好きで、家と家の間の隙間のような通路を見つけたり、公園でも誰も入らないような奥まった場所を秘密基地にしたりと駆け回っていました。
昔から友達が少なかったので、日が暮れるまで一人で「かくしつうろ」や「ちかみち」や「ふしぎなばしょ」を探しては、日記につけていました。
探検をしている時、よく見かける尻尾の短い黒猫がいました。野良猫か飼い猫かも分かりませんが、私は勝手に「メイちゃん」と呼んでいました。
その日はいつも行かない広い自然公園を探検していたのですが、鬱蒼とした森の中にくねくねと小道が枝分かれしている公園で、私は道に迷ってしまいました。
段々と薄暗くなり黒々とした木々に囲まれて、私は誰ともすれ違うことも出来ず半泣きで公園を彷徨っていました。
やっと森から出られた!と思ったら全く知らない出入口に辿り着しまい途方に暮れた時、猫の鳴き声が聞こえました。
公園の出入口のポールのところにメイちゃんが立っていました。いつも近づくと逃げてしまうのですが、その日はじっとこちらを見つめていました。
私が近づくと少し歩いて公園の通路に入り、またこちらを見ています。街灯もない暗くなりつつある森にまた入っていくのは怖かったのですが、それでも何故かメイちゃんについて行こうと思いました。
メイちゃんについて園内に入り、森の中の小道を歩き続けました。気がつくと公園に入った時の出入り口まで戻っていました。
メイちゃんは特にこちらを気にする風でもなく、木々の暗がりに消えていきました。私は心の底からホッとしながら、街灯が照らす住宅街を走り抜け、家に帰りました。
それ以来、メイちゃんとは会っていません。
大人になってからその自然公園を歩きましたが、大人の足では何のことはない、保護林の中にくねくねと小道を敷いた静かな公園でした。
でも小さな私にとってはとても怖くて不思議な体験で、実家の近所を歩くときはいつもメイちゃんのことを思い出します。
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