動けない私と動く人影
投稿者:江戸椎欄 (1)
私がこれまで生きていて、心霊現象を経験したことが一度だけあります。あれは数年前、大学院の修士論文の提出数週間前のことでした。
当時私は関西の大学院に在籍しており、ワンルームのアパートで一人暮らしをしていました。修士論文の提出期限が迫ってきた冬、いつも通り布団に入って眠りについたのですが、しばらくすると体が動かなくなりました。いわゆる金縛りというものかと思います。視線だけは変えることができたのですが、首も体も全く動かず、パニックになりました。冬にもかかわらず寒気と汗で非常に苦しかったのを覚えています。
何とか視線を変えて部屋の周りを探ると、月明かりの中で、部屋の隅に暗い不気味な人影が見えたのです。当然、私一人しかいないはずの部屋で、だれかが手をあげて体をくねくねと動かしていました。人の影が、カゲロウで揺れているような感じでした。ただ、間違いなく人でしたし、人の気配もはっきりとしました。
私はその人影を凝視することができず、ただただ時が過ぎるのを待ちました。どんどん呼吸が荒くなり、息ができなくなりそうでした。影がこちらに迫ってくる感覚はなく、仮に迫ってきたら怖いと思い、目をぎゅっと閉じたり、時々開けてこっそり確認したりと、ホラー映画で俳優がよくやるような動作を繰り返ししました。
気が付くと、早朝で日の光が少しだけ入ってきていました。途中で気を失ったようでした。起きると、人影はありませんでしたし、体も重かったものの、自由に動きました。
直接何か影響があったわけではないのですが、ずっと忘れられない恐ろしい体験でした。あのようなことは、もう二度と経験したくありません。
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