幸福を運ぶ少女
投稿者:muu (5)
私が学生だった時の話です。
当時高校3年生、受験を控えていました。
少し年の離れた姉は、年齢でいえばとっくに就職している頃だったのですが、職業訓練校に入り直すために同じ時期に受験予定でした。
姉は大変頭が良く、美人でもありましたから、私の中では同じ道を歩む事に引け目を感じていました。
きっと姉の方がいい学校に入れる、勉強もできて資格もあっという間に取れる。
今思えばもっと頑張れよ、と自分に渇を入れたいのですが、多感だったこともあり、イライラモヤモヤしていました。
受験勉強はというと、真面目にやっていました。
学校での講習を受け、高校の傍ら予備校に通い、それなりに力もつき、頑張っていたつもりです。
でも心のどこかで「こんなことやってて意味があるのだろうか」と冷めた目で見る自分もいました。
そんなこんなであっという間に年が明け、受験日まであと数日という頃になりました。
私はまだ進学に疑問とためらいを持っていて、煮え切らない気持ちを引きずったまま試験に挑むことになりそうでした。
ある日の夜、いつも通り自室のベッドで寝ていると、金縛りに遭いました。
初めてではなかったのですが、ものの見事に身体が動かないので正直怖かったです。
しばらくそのままでいましたが、首と目だけが動くことに気づいたので
なぜか左隣にあった洋服ダンスの方に首を動かし、視線をタンスの側面に移し、ぼうっと眺めていました。
するとどこからか、アハハ、アハハ…と笑い声が聞こえてきました。
小さい子の無邪気な笑いです。性別は判断しかねました。
だんだん声は近づき、見つめていた洋服ダンスの側面あたりに、膝上丈の着物を着た子供が映りました。
上半身はぼやけて消えて見えず、腰から下だけが見えたのです。
びっくりするや否や、その子は「あったんでー」と言い、再びアハハ…アハハ…と笑い
私の足元方向に走って行ってしまいました。
金縛りが解けた私は起き上がり、電気をつけましたが誰もいません。
怖さは不思議となく、まあ疲れてるんだろうと思い、再び床に就きました。
そして受験の結果
姉は希望校に合格、私は不合格。浪人して来年再チャレンジする事になりました。
春から予備校生になり、勉強をしつつ姉から学校の様子を聞いたり職業体験をしていくうちに
段々とこの職業に就きたい、と正直に思えるようになってきました。
そして翌年合格した私は晴れて入学、卒業、希望の資格を手に入れ就職しました。
あの子供を見てから数年経ち、分かったことがあります。
それは、あの時の子供は座敷童だったのではないかという事。
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