雛人形の口が動いた
投稿者:逢桜 (3)
短編
2022/07/16
00:25
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小学校2年生の終わり頃、いつも和室で祖母と寝ていました。
3月、和室には雛人形が飾られており、私の寝ている右側に置かれていました。
祖母に厳しく叱られた後で、なかなか眠れませんでした。
祖母が眠ったあと、どこからか雛祭りの歌が聞こえてきました。叔母さんのような、低めの声です。
祖母が歌っているのかと一瞬思いましたが、祖母は寝息をたてています。
どこから聞こえるのかと耳を済ましていると、どうやら私の耳元で歌っています。
雛人形を見ると、三人官女の真ん中の雛人形が口を動かしていました。恐ろしいという感じではなかったです。
そのうち、歌声がやみ、再び雛人形を見ると、やはり口は動いていたのです。
歌声はなくなったのに、口が動いています。ふと、和室から見えるベランダを見ると、黒い赤ん坊のようなものがふわふわ浮いて、近くにあるアロエの近くをグルグルまわっていました。そのあとふっと上に消えていきました。
雛人形と黒い影が関係あるのかないのか、私にはわかりませんが、そのあと何だかとても恐ろしくなりました。
雛人形の歌は怖くなかったのに、黒い影を見た後に寒気がしました。
祖母は寝ているし、叱られた後だったので、起こすとまた叱られそうで、布団の中で震えて夜を過ごしました。
たまに思い出して、寒気がします。書いている今も、寒気がします。
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