なきせみ
投稿者:南平 (1)
今から十数年前の夏のことです。
わたしは当時、都内の大学に通う学生でした。
期末テストも終わったということもあり、これからの夏休みに期待を膨らませていました。
そんな折、仲のいい友人に「夏休みを利用して一緒にバイク免許の合宿に行かないか」との誘いをもらいました。
わたしは特になにか趣味があったわけでもなく日々無為に過ごしていたので、面白そうだと思い、その誘いを受けました。
合宿は無事に終了しました。
それからというもの、バイク選びや購入、そして待ちに待ったツーリング…などなど、新鮮で楽しい日々を過ごしました。
楽しい時間というのは過ぎるのが早いもので、気がつけば8月も末、夏の終わりが迫っていました。
そこでわたしは友人と長距離のツーリングをすることにしました。
目的地はX県のとある山、住んでるところから100kmほど離れた場所でした。
目的地が近づくにつれ、自然と人通りや車がほとんどなくなっていきました。普段と全く違う景色に戸惑いながらも、緑豊かな山の峠道を気持ちよくバイクで友人と駆け抜けました。
さて、目的地の目前といったところで、自販機があったので休憩をすることにしました。
友人とこの夏の大冒険を振り返っていると、すぐ近くから子供の鳴き声が聞こえました。
ドキッ!とし、わたしは友人と顔を見合わせました。
こんな山奥で子供なんているわけないんです。
不思議に思い、声のしたほうを見てみますと、一匹の蝉が鳴いていました。
驚くことに、子供の泣き声の正体はこの蝉だったのです。現に「えーん!」と泣いています。
それを見聞いた友人は「気持ちが悪いなぁ」と言って蝉を潰しました。真っ赤な血が飛び散りました。
その後何事もなく、ツーリングは終わり新学期が始まりました。
わたしは友人に二度と会うことはありませんでした。
最後の一文、友人と喧嘩したのかな?