跳ねる回る光
投稿者:鯑 (3)
私が住んでいた町は、2つに分かれている。人が大勢住んでいて、夜も明るい街と、田んぼや畑、工場しかなく、夜になると、街灯もなく、誰も道を歩かない、暗い街である。
あれは、私が、明るい街の本社から、暗い街の工場へと、異動になったときである。明るい町の住んでいるところから、バイクに乗って、暗い街の工場に通う毎日。夜になると暗い街とは言え、昼間は、工場で働く人、近くの田んぼや畑で働く人と、人は意外にいるもので、通勤の時は、通る道が、渋滞気味に、なったり、事故もちょくちょく見かけた。はっきり、言って私は、交通量は多いのに、道の整備が行き届いていない、暗い街の道がいやだった。乱暴な工場に働く人のクルマは、私を疲れさせた。なので、工場の仕事で、夜勤を、お願いされたときは、渋滞にもはまらず、空いている道を、バイクで通勤できるのがちょっとうれしかった。
夜勤が始まり、夜の空いている道を、バイクで走るのは、非常に気楽で好きだった。ただ、街灯がなく暗いので、そこは、少し怖いところである。夜勤になって、3ヶ月くらいたったころ、冬になって、田んぼや、畑も枯れた草ばかりになった。いつも通り暗い街の暗い道を、田んぼに沿ってバイクで走っていた。その時、大きな音とともに、急ブレーキをかけた。バイクの前を、光るものが跳ね回っているのである。私は、肝をつぶして、そのままただ茫然と、その光を見ていた。光は数を増やして、畑や田んぼの上を跳ね回り、私のバイクの前をまた通って、どこかに消えていった。
工場に着いて、先輩に、その話をしてみたが、見たことはないと言われた。そのあとも、同じものを見たことがある人に、あったことはない。暗い街には、今も特に怖い話のうわさはないようである。
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