山道であった不思議なこと
投稿者:TTM (1)
そうやって夢中で走るうちに平坦な道に出ました。相変わらず真っ暗で一寸先もわからない状態でしたが、また駆け出そうとしたとき背後から車の音が聞こえてきました。
近づくヘッドライトを見ていると、その車はクラクションを鳴らしながら私の方に近づいてきました。車から降りてきたのは父親で、降りるなり私を抱きしめてきました。
「ごめんな。大丈夫か。」
父親も泣いているようでした。
私は心底ほっとして、「大丈夫だよ。」と伝えました。
ヘッドライトに照らされた先は山道に唯一架かる鉄橋で両脇は崖になっています。
このまま走り続けていたら崖下に転落していたかもしれないと思うとゾッとしました。
車の中で父親に聞いた話では、結局あの後うさぎを捕まえることが出来ずにすぐに引き返したそうです。
ところが私を降ろした場所まで戻っても見つからない。
他に分岐などない一本道です。急いで子供の足で移動できそうな距離を行き来しました。
しかしそれでも見つからず、もしや崖下に落ちたのではないかと山道の下を探し、それでも見つからないので応援を呼ぼうと山道を下りる途中で私を見つけたのでした。
この時は夜の9時前で、おそらく1時間以上も山中で彷徨っていたことになります。
不思議だったのは自分に1時間も走り続けていた感覚が無いこと(少なくとも体感では数分くらいに感じていた)。
そして山中の一本道でいつ父親を追い越したのか、ということです。山道の下は険しい草むらで、とても通れるような場所ではありません。
父親もとても不思議に感じたようですが、私を無事に見つけられた安堵から深く考えることはしないようでした。
その後大人になってからも何度か同じ道を通りましたが、今でもどこをどう通って行ったのか不思議に感じます。それくらい高低差の険しい道で、無事に帰れたのが奇跡に感じるくらいです。
私もたまに「ワープしたのか(笑)」と想像することがありますが、まさかそんなことが、と打ち消す思い出です。
一瞬別の世界に迷い込んだのでしょうか