お別れのあいさつ
投稿者:夾竹桃 (3)
短編
2022/02/07
08:14
1,305view
私の知り合いAさんの話です。
Aさんは大姑、要するに旦那様のお婆様を介護していました。
姑は嫁に入った時、大姑にいびられていたため一切介護はせず、寝たきりの大姑の下の世話、ご飯、着替え、全てAさんがしていました。
大姑さんはそんなAさんにはとても優しくいつも寝る前に『ありがとう、ありがとう、おやすみ』と優しく手を握ってくれたそうです。
そしてある日の夜、Aさんが眠ろうと布団に入りウトウトしていると寝たきりのはずの大姑さんが部屋に入ってきました。
そしていつものようにAさんの手を握り『ありがとう、ありがとう』と言ったそうです。
訳がわからない状況の中、Aさんはなぜだか涙が止まらなくなったそうです。
気がついたら朝でAさんは夢だったと気がつきました。
嫌な予感がしたAさんは急いで大姑の部屋へ様子を見に行くと、大姑さんはすでに息を引き取っていたそうです。
きっとお世話になったAさんに、あの世へ行く前に感謝の気持ちを伝えたかったのでしょう。
そして驚くのがそれだけにとどまらず、お墓の掃除に行った日の夜には、大姑さんをお風呂に入れてあげる夢を見たそうで、変わらぬ優しい笑顔で『気持ちよかった~、ありがとう、ありがとう』と言っていたそうです。
いまでもAさんは『あの優しい笑顔と手の感触は忘れない』と言っていました。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 8票
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。