自分の中に入ったのを感じた体験
投稿者:手束 (11)
妊娠中はやたらと眠い。その日も昼寝をしていた。
金縛りには慣れっこになっていた。目が覚めればその症状は終わるので、我慢ができたが、その日は違った。
目が覚めても意識が可笑しい。頭がぼーっとする。身体が重い。その重い身体を引きずり、お風呂場の掃除に行った。
お風呂洗剤をバスタブにかけた時、突然、自分の意思とは関係なく話し始める。
「私だけが、私だけがあの人を、あの人を愛していたのよ」
今でもはっきり覚えているセリフ。
お風呂場で言うセリフではないのでハッキリと覚えている。
その一言を言ったら急に身体が軽くなった。きっと女性の霊が身体に入ったと思う。
その次の日かまた次の日(一週間以内)、会社の仮眠室で昼寝をした。
多くの人が金縛りにあう場所だが、その時もなった。
いつもは男性の霊だがその日は初めて女の人が来た。
女性は私の顔を覗きに来た。ただ覗いただけで居なくなってしまう。
しかし私はいつも姿は見えないのに、その日だけは見る事が出来た。
看護師さんだった。白衣の上に紺色のカーディガンを着ているのがわかった。
怖いとは思わず、ふっと温かい物を感じる霊だった。この仮眠室では感じたことのない雰囲気で安心。
つい、その事を会社の先輩にポロッと言ってしまった。その先輩は怖がりながらも、総務に話す。
私は直接聞いていないが、総務の人は先輩にこう話したらしい。
すぐ前のマンションは病院の跡地であった事、その病院の屋上から自殺を図った看護婦がいた事を。
もちろん理由も誰なのかも不明だが、その看護婦さんだと思う。
温かい雰囲気を感じたのはお礼に来てくれたと解釈する。
私の身体を通して言いたい事を言えたのだから。
私は、「あの人だけを愛していた」と言った霊に答えてあげたからだと思う。
身体に入られたのは初めてでどうしていいか分からなかったが、怖くても身体の反応を拒否しなかったからだと思う。
涙を出してあげたからだ。後にも先にもたった一度の体験だったが、無念を晴らせた事に協力できたかなって思う。
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