吊り戸棚の神様
投稿者:オブラート (2)
霊感のない小学生の頃の私が体験した、不思議な話しである。
我が家には台所の向かい側の、吊り戸棚の中に神棚がある。
小さい頃から母が毎朝水を替え、手を合わせる所を見てきた。母が忙しくて水を替えられない時は私が替えたりしていた。
父は神様を信じていないのでいつも戸棚は閉めていた。見つかって処分されたりしたら、たまったものではないからだ。
ある夏の夜のこと。
その夜は特に蒸し暑く、扇風機をまわし布団もお腹だけにかけて寝ようとしたものの中々寝付けないでいた。
深夜1時をまわった頃だったと思う。無性に喉が渇き、眠れる気もしない私は氷でも頬ばろうと思い起き上がった。喉が潤ったら直ぐに眠りたいのもあり、電気の明るさで目が覚めないように明かりをつけず暗闇の中、冷蔵庫へ向かった。毎日歩いている家の中である。暗闇の中でもすいすいと…いや少し物にぶつかりながら冷蔵庫に辿り着くことができた。そして冷蔵庫の扉に触れた瞬間、ふと神棚の方から気配を感じた。正確にいうと、神棚と台所の間の廊下からである。視界の端に白いぼーっとした光が見えた。
びっくりして恐怖からそちらに顔を向けらなかったが、少しして気配を探ってみた。冷静になりたかったのかもしれない。その気配は人型で160cm位だったと思う。ガッツリ顔をそちらに向けて見たわけではないので、感じた気配の特徴で申し訳ないがそう感じたのだ。それから何だか悪い感じはしなかった。悪いというか、清らかだな、と感じたのだ。その瞬間私の緊張は解け、自然とそちらに向けてお辞儀をしていた。神棚に祀られている神様だと思ったのだ。ただ神様や仏様は直接見てはいけないと思っていたので相変わらず顔は伏せていた。
安心しきった私は氷を頬張って喉も潤い、その後はよく眠れた。
後日その話を父に話してみた。すると、そうか神様はいるんだな、と驚くほどすんなりと戸棚をあけて水を替えてくれた。
もしかしたらあの日あらわれた神様は、戸棚をあけててほしかったのかもしれないな、と思った不思議な体験であった。
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