緑色の男
投稿者:ABAA (2)
夜、寝室で寝ていた僕はふと目を覚ましました。
姿勢は仰向けで、薄暗い中で部屋の天井が見えています。
突然視界の端から「何か」がヌッと入ってきました。
緑色のシートを被ったような姿の男。
シートは濡れたように艶やかで目の部分だけ穴が空いているのですが、目は見えず黒い空洞のようです。
顔は全く見えませんが「男」だと感じました。
緑色の男は僕の顔を上から覗くように見ているようでした。目は見えませんが「見られている」と感じました。
男の息遣いが聞こえてきます。小さく、低い声が漏れています。
男はそれ以降何をするでもなく、ただ僕を見ています。
恐怖心は感じなかったです。ただ「何をしているのだろう」と思うだけでした。
体を動かそうとしましたが、動きませんでした。その時に「これは夢か」と思ったかもしれません。
そう、夢でした。そして目を覚ましました。
ただその瞬間が、とても不思議でした。
夢の中で見ていた部屋の天井。目を覚ましてから目に入る部屋の天井。どちらも寸分違わず同じ天井です。
つまり、目を覚ました瞬間に男は消えましたが見えている天井は夢と現実で全く変化がない。
男が消えた瞬間が夢と現実の境界だと思いますが、景色は一切変わっていない。
眼を閉じていた時と開いた後の境を感じられないというとても不思議な感覚。
このような夢を見たのはこの一回きりです。
夢って、いい夢も悪い夢もすぐ忘れるものですよね。
ただこの夢だけは、10年近く経った今もハッキリと覚えています。
それでもこれは、ただの夢。のはずです。
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