仏間を歩き回る喪服の老婆
投稿者:峰 (38)
友人から聞いた話。
友人の家は当時築百年を超えたおんぼろの日本家屋だった。
その家の仏間には、代々大切にされてきた日本人形が、ガラスケースに入れてたくさん飾られていた。
仏間の床は経年劣化でたわんでおり、人が歩くとガタガタと部屋中の家具が小さく揺れる。
そのせいで、たくさんの日本人形がカタカタカタカタと音を立てて揺れるので、とても不気味だったと言う。
ある夜、友人はトイレに行きたくなって目を覚ました。
用を足して寝室に戻ろうとすると、どこからかカタカタと何かが揺れる音が聞こえる。あれ?と思った。それは仏間から聞こえてくるのだ。
その時、時刻は深夜の1時ごろ。
友人は、こんな時間に誰が仏間にいるんだろうと不思議に思い、そっと覗きに行ったそうだ。
仏間の襖に手をかけると、カタカタという音に紛れて、ギッギッギッギッと足音のようなものも聞こえる。
足音はまるでぐるぐると仏間の中を休みなく歩き回っているように聞こえた。
友人は、ここにいるのが家族だとして、あまりにも様子が不審だということに気がついた。
そこで、そーっと音を立てないように襖を開けて、隙間から中を覗き込んだ。
そこには、黒い喪服を着た見知らぬ老婆が、下を向いてギッギッギッギッと仏間を歩き回っている姿があったという。
友人がギョッとして後ずさった瞬間、老婆は友人の方をバッと振り返り、そのままスーッと消えてしまった。
その老婆が一体何者だったのかわからない。
友人の家は随分前に老朽化を理由に建て替えたが、未だにその夜のギッギッギッギッという足音を忘れられないという。
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