仲の良い親子に見える父娘
投稿者:tkyk (1)
私が北海道札幌市に住んでいた頃の話です。自分は他県出身、札幌市には就職で来ました。就職したての新卒時代、希望と不安が入り混じる中、平日は仕事を精一杯頑張り充実した日々、休日はよく家の周りを散策して美味しいお店、お気に入りのカフェやスポットを探していました。
本州は5月にもなると蒸し暑い日も続き散歩しにくい日も多いですが、札幌はそんなことはなく穏やかで過ごしやすい日が多いです。春の日差しにとてもすごしやすい気候、都会だけど人が多すぎるわけでもなく、自然も豊かな札幌は本当に最高だなあと感じる日々でした。
とある休日に近所を散歩をしていると小さな女の子を抱いて嬉しそうに歩いている男性を見かけ、微笑ましい気分に浸っていました。
後日、会社帰りに例の親子を見かけました。なんとなく違和感を感じて、よく見ると女の子の顔こそ見えませんが、手がブラブラ、首がグネグネしており、明らかに様子がおかしく、そこでようやく人形だと気づきました。男は楽しそうに女の子に話しかけており、遠目では間違いなく仲の良い親子に写るでしょう。その男の笑顔と現実の不釣合いな光景に度肝を抜かれたのを覚えています。その場をすぐに離れました。
ある日洗濯物を干していると窓から見下ろした隣の家のベランダに、先日見かけた不気味な人形が座っているのを見かけ背筋がぞっとしたのを覚えています。その家に例の男性が住んでいたのです。特にその他実害があったというわけではありませんが、怖くなって当時住んでいたマンションから引っ越しました。
後日、近所の人と話しをする機会があり、男のことについて聞いてみると、娘に先立たれた人らしく、数年前は本当に娘さんがいたとの事です。きっとその男性にとってはその人形を本当の娘だと思って時が止まった状態で今を生きているのだと思うと怖く感じてしまった事に罪悪感を感じました。同時に現実の残酷さと悲しみが変えてしまう人の心を感じ切なくなりました。
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