友達のじいちゃん
投稿者:ブラウンシュガー (2)
僕の中では、怖い話と言うより悲しかった思い出として残っているのですが、たまたま友人にこの話をしたところ、「それは怖い話だ」と言われたため、不安ですがこちらに投稿させていただきます。
小学生5年生の頃、2つ隣の学区からナオヤが転校してきました。
ナオヤは明るく活発で、また通学路の方向が同じだったため、あっという間に仲良くなり、放課後は毎日欠かさず遊ぶ親友になっていました。
しかし、僕はナオヤに一つだけ不満があったのです。
ナオヤは、頑なに僕を自宅に入れてくれないのです。
僕には弟がいるのですが、部屋が共同のため、弟が友達を自宅に招くと僕たちは部屋でゲームをする事ができません。その為、僕は弟と1日ごとに、友達を招いていい日を設定していました。
当然、弟が友達を招いていたら、仕方なく外で遊ぶか、別の友人を頼って、その友人の家で3人で遊ぶか、しかできないのです。
ナオヤは一人っ子で、両親は共働き。彼の部屋にはテレビもゲーム機もある事を知っていました。
ある日、僕は誕生日プレゼントに、心待ちにしていた最新作のゲームを買ってもらいました。もちろんナオヤもそのゲームをとても欲しがっていました。
しかし、運の悪いことにその日は弟が友達を招く日。心待ちにしていたナオヤとの時間は明日の放課後まで持ち越しとなってしまいます。
僕はしきりにナオヤの自宅に行ってゲームをやりたいと懇願しました。ナオヤ自身も余程ゲームが楽しみなのか、いつもと違い、明らかに揺らいでるのがわかります。
ナオヤは言いました。
「うち、認知症のじいちゃんいるから。迷惑かけちゃうから。だからダメなんだよ。」
ナオヤの家におじいちゃんがいる事をその時初めて知りました。
なるほど、と思いましたが、彼の言う「迷惑」がピンと来ませんでした。
僕は親族に認知症の人がおらず無知だったと言うのもありますが、どうせナオヤの部屋に籠ってゲームをするだけだし、年寄りにかけられる迷惑なんてたかが知れてる、と思ったのです。
「大丈夫だよ、俺のじいちゃんもボケてるから、対応は慣れてる。
何かあっても俺手伝うし。」
僕のついたそんな嘘で、ついにナオヤは折れ、めでたく彼の自宅に初訪問できる運びとなりました。
放課後、一度帰宅し、買ってもらったばかりのゲームを手にして足早に彼の自宅に向かいました。
彼の自宅はいたって普通でした。玄関には彼の家族が旅行先で撮ったと思われる写真や造花の花束が飾られ、靴も綺麗に並べられていました。
玄関に上がると、廊下の奥のリビングから「リュウくん!久しぶりやね〜!ゆっくりして行きぃね〜!」と、例のおじいちゃんが迎えてくれました。
僕はリュウくんではないですし、もちろん初対面です。
ナオヤは「違うよ、コイツはヒロ(僕の名前)だよ。今日初めて来た。」と紹介しました。
なるほど、リュウくんと言うのはナオヤが転校する前の学校の友達で、認知症だから記憶が曖昧なんだなと思いました。
しかし、見逃せない違和感がありました。
認知症と聞いて勝手に80歳くらいの年齢を想像していたのですが、彼のおじいちゃんは僕の想定よりかなり若く見えたのです。おおよそ60歳を少し過ぎたくらいの彼のおじいちゃんは、背筋もしっかり伸びており、髪も黒髪と白髪が半分ずつ混ざったような色で、言葉も明瞭でした。
何とも言えない気持ちになりつつも、僕らはすぐさまゲームに夢中になりました。
「ヒロくん、カルピスあるから飲みぃね」
「ヒロくん、アイスキャンデー食べるかい?」
「ヒロくんどら焼きは好きかね?」
おじいちゃんは数十分おきに部屋を訪ねては客人の僕に世話を焼いてくれました。
な〜んだ、優しいおじいちゃんじゃん。と僕はそのもてなしに感動しましたが、その度にナオヤは
「うん、うん、そこ置いといて」
「わかったわかった、早くあっち行って」
と、冷たい対応をするのです。
それどころか、おじいちゃんがドアノブを捻る音がした瞬間に、それまで熱中していたゲームを放り出し、おじいちゃんと僕の間に割って入るような形で立ち塞がります。
その様子に、「もしかしたら、突然キレて殴りかかってきたりするのかも」と、段々不安になってきました。
怖かったです(@_@)
同時に悲しい部分もありました。