卒業後に分かった正体

私が某大学に通っていたころ、２００名近くが収容できる教室での授業で、いつも一番前に座っている男子生徒がいました。

いつも熱心に授業を聞いているので、まじめな子なんだなと思っていましたが、不思議なことにその子を見かけるのは、その教室での授業のみでした。
なぜ気になったかというと、その子はいつも同じ服装だったからです。しかし、私の学部は一学年で３００名以上おり、結局卒業までその子と話すことはありませんでした。

月日は流れ、卒業後某企業に就職していた私に、人事からOBとして母校での会社説明会へ参加するよう、派遣指示がありました。とても楽しみにして、準備も万端にし、同じ大学出身の先輩と２人で出向きました。しかし、私は会場となった教室の入り口で気分が悪くなり、先輩にお願いして帰社しました。

なぜなら、あのまじめな子がまったく同じ服装で同じ席に今でも座っていたのが見えたからです。

それ以来母校にはいっていません。
また不思議なことに、その子のことを他の同級生数名に話しましたが、その子のことを覚えていたのは私だけでした。
私は霊感などなく、お化けなども見たことはないので、その子が何者なのかはいまだにわかりません。特にオチも怖い展開がない話ですが、本当に不思議なこととは、案外こんなものではないでしょうか。