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pectoribusさんによるにまつわる怖い話の投稿です

盆の秋田で
短編 2022/12/11 19:30 1,386view

特に暑い夏だった。
先輩の代わりで、急遽、秋田県能代市に仕事に向かった。
駅前の平安閣のビジネスに一することとなった。
お盆で部屋を取れるか心配だったが、一室空きがあった。
夕方、ホテルでチェックインをして、エレベーターで11回まで上がった。
廊下やロビーでも泊り客に合わずに部屋に入った。
廊下の赤い絨毯が何故か違和感を感じた。
部屋に入ると、いきなりジーという耳鳴りがした。
今振り返っても、本能だったのか、急いで備え付けの机の引き出しを開けて聖書を探した。
聖書は無かった。
部屋はベットと机が置いてある以外、何もなく、大きな窓かっらは、西日が陰気な感じで差し込んでいた。
何故か、この部屋で飛び降りがあった気がして、少し開閉できる小窓から、下を覗いてみた。
ちょうど真下は先程チェックインいロビーの入口だろう。コンクリートの屋根が出っ張ていた。

水はけが悪いのか、濁った水たまりには、苔が生えている。
とりあえず、風呂に入ることとした。ユニットバスだが、湯に浸かる習慣ので、湯を溜めようとカーテンを引いて、湯銭を見たとき、ぞっつとした。
現実主義の自分は、霊やそういった妖等は、まったくと言っていいほど信じないのだが、湯を張っては見たものの、やはり恐ろしくて、シャワーで済ますことにした。
が、目を閉じると、背後に緯線を感じる。洗剤が目に入っても目を閉じてはいけない気がした。
後ろの視線は、凶暴な感じで、なぜか、目の血走ったスーツ姿の男が見えた。歳は30~40くらいの痩せて頬がこけている。顔色が土色で黄は伸びて濡れている・・・・
急いで、シャワーを終えて、部屋中の明かりをつけて、YVを点けた。
明日の仕事の資料を読み返して、寝ることにした。
蒸し暑い夜だった。掛け布団を退かそうとベットに目を向けると、ベットの足元に畳まれた毛布に
赤いシミがある。よく見ると、赤い血痕のようだ。ティッシュペーパーを紙縒りにしてつついてみると、まだ乾いておらず、紙縒りの先に赤くにじんできた。しかも、下の絨毯にも赤い液体が点々とこぼれている。きっと、この部屋の掃除担当の人が、ケガして鼻血でもだしたのかな?
どっと疲れがでた。ため息をついて、交換をフロントにするか迷ったが、バブルがはじけて大変なご時世、まして職が少ないであろう地方で、この部屋担当のベットメーキングさんが、自分の電話で叱責されると申し訳けないと思い、毛布を蹴飛ばして床に落として掛け布団だけで寝ることにした。
ふと、TV番組がホラーのリングを放送していることに気が付き、チャンネルをお笑い番組にしてそのまま寝た。
モーニングコールで目が覚めて、以外にも熟睡していたことに驚いた。
やはり、トイレは怖いので急いで用を足し部屋を8時前に出た。

昨日は人っ子一人合わなかったエレベーターやロビーには、親子ずれやカップルがいた。
フロントにキーを返して支払いしている間、フロントの2人の女性従業員の視線が気になった。
目が合うと、ニコニコ話しかけてきたが、ホテルを出るとき振り返ってみた。
案の定、女子二人は、こちらを横目で見ながらひそひそ話をしているようだ。
なんとなく、分かった。この時期に空いていて、値段も安かった。あの部屋は、イワクつきなのだろう・・・・
朝日はさわやかで、昨日のホテルのことは、どうでもよくなっていた。
仕事が終わり、東京に帰る前に、秋田支部の同期が迎えに来てくれていた。
同期の実家でお昼をご馳走になり、帰り際、庭でみんなで写真撮影をした。
同期のご家族の温かなもてなしに、手土産のひよこひと箱は、面目なく、帰ったら何か送ることにした。
帰りは、行よりも短く感じた。いつもの地下鉄の改札を入った時、心からホッとした。地下鉄がこんなに恋しいとは、自分でも驚いた。
8月も終わりのころ、秋田の同期から電話が来た。
同期が済まなそうに、あの時とった写真が、取れてなくて、ぼやけてたから、送れないとのことだった。それでも良いよと慰めたつもりが、同期があわてて、真っ黒だし、たぶん逆光だったのかも、写真は寺に持って行ったとのことだった。
東京でいつものリズムが戻り、忙しさのあまり忘れていたので、あまり残念ではなかったが、帰り道、思い出していた。あの日は、いい天気だったが、写真を撮ってくれた同期の母親は、レンズの蓋や逆光に必要以上に注意していたのだった。
しかも、寺に持っていくことなのか・・・・?
ユニットバスの気配を思い出した。まさかね・・

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