赤いリボン
投稿者:idy (1)
「ねえ、知ってる?」
小学生の頃に仲良くしてた子は、私よりも物知りだった。
私は親から禁止されていたので当時の流行りのテレビの番組など見たことがなかった。そんな私にその友達は知らないことを教えてくれる存在だった。
あるときは急に呼ばれて公衆電話を指差し、一緒にやってみようと誘われた。彼女が手に持っていたのは、テレホンクラブというものの広告のチラシで、ここにかけてみるのだと言った。
よくわからずに彼女がダイヤルしたあとの受話器を受け取り耳に当ててみると、
「こんにちわ」
と男の声がした。
「……」
何を話していいか分からない。隣で友達はクスクスと笑っている。
「ねえ、何歳なの」
そう聞かれた男の声の湿ったような響きにぞっとした。
「高校生」
「ほんとに?」
そのあと何を話したか覚えていない。ただただ怖くて、すぐに切ってしまったのかもしれない。
その「遊び」は一度きりだった。でも、その友達はいつも、私にとって知らない世界を教えてくれる人だった。
「これ、なんだろうね」
放課後に帰る途中、友達が足を止めた。
見ると、一軒家の垣根のところに、リボンが落ちていた。赤くて古びていて、土がついている。
「うん…」
あまり落ちているものを拾わないように、と母からよく言われていた私は見るだけ見て先に行こうとして、呼び止められた。
「なにか、埋まってない?」
引張りあげたリボンは、実は先が地面に埋まっていたのだった。
「え、…でも、ここ人のうちだから」
「なんだろうねぇ」
好奇心が湧くと止まらない友達は、垣根の向こうをぴょんぴょん飛び跳ねて見た。
「もう、行こうよ」
私は友達の袖を引いた。
それから丁度一週間して、友達が満面の笑みで誘ってきた。
「ねえ、あのリボン。掘ってみよう」
「だめだよ」
「大丈夫、私、昨日あの家の隣の家のおじいさんから、あの家の人はもう随分前に越していって誰もいないって聞いたんだから!」
「でも…」
「大丈夫、掘るんじゃなくて、お墓にしたいっていってあるから」
「お墓…」
友達は小さなチョコレートの箱を見せた。
「ほら、学校で飼っているメダカが死んで、ここに埋めたいって言ったの。そしたらおじいさん、それくらいならいいんじゃないかねって言ってたから」
「でも、メダカなんか飼ってない」
「いいの! これにメダカが入ってることにして、ね! あと、お花を飾ればいいよ。今日行くから、シャベル持ってきたから」
結局強引に誘われ、私も行くことになってしまった。
恐い