花壇のおじさん

私が小学生の頃の話で、もうかなり昔のことになります。
当時の私は、クラスでも人気者というほどではありませんでしたが、
そこそこ友達はいた方でした。

その日は珍しく、いつもの住宅街とは違った道を通り、
友達グループで談笑しながら下校していました。

突然、一人が「あっちに変なおじさんいない？」と言って指をさしました。
視線をそちらに向けると、前屈みに蹲った背中が見えました。

友達と一緒に駆け寄ってみると、おじさんが道路脇の花壇の前にいました。

確か花壇は全て枯れて萎れていたと思います。

おじさんは花壇を見つめながら「殺してやる……」と呟いていました。

その異様な雰囲気に私達は怖くなってその場から逃げ出しましたが、
おじさんが追いかけてくる事はありませんでした。

ただ、後ろの方で、おじさんの叫ぶ声がずっと聞こえていました……。

その日は、家に帰っても恐怖で寝れませんでした。
殺すなんて言葉を普段の生活の中で聞く機会、ほとんど無いですからね。

おじさんは何があってあんなことを口走ったのか……。
今でも考えてしまいます。