震災で見た不思議な光景
投稿者:まいやん (1)
今は違う場所に住んでいるのですが、私がまだ小学生だった頃は兵庫県の明石市に住んでいました。
父が不動産業をやっていたので、その地域にしては割と良いマンションに住んでいたと思います。
ただやはり父は仕事が忙しい様で、滅多に家に帰ってくる事はありませんでした。
ですので、基本的に夜眠る時は母と私と弟と妹の四人だけ。まだ幼かった妹と一緒に、私達四人はいつも小さな畳の部屋で眠っていました。
その日、一月十七日も私達はあの揺れを感じるまでは通常通りに眠っていたのです。
明け方…ぐらりと揺れた地面。壁や床が聞いた事も無い音を立て、母の『布団をかぶってっ』という叫び声が部屋に響きました。
母は布団を被りながら、当時まだ生後七ヶ月だった妹の上に覆い被さって必死に守っているのが視界の端に見えました。枕元に突如出現した黒い線…これは後程明るくなって分かったのですが、私の丁度枕のすぐ横の壁に大きな亀裂が入っていたのでした。
─これは死ぬかもしれない。
子供ながらにそう感じた私も、急いで布団を被りました。ですがどうしてもこの異常事態に周りの状況が気になって仕方がありません。
大きな揺れに身体を持っていかれそうになりながら、布団の隙間からチラリと部屋を見ました。
本来ならそこは、子供服を入れている小さな箪笥があります。ですが、私の目がとらえた物はそんな物ではなく、葉が盛大に生い茂った立派な木でした。
何故木がここにあるのだろう…。そんな事を考えている間に揺れはゆっくりとおさまり、不思議に思いながら布団から出ました。
視界が開け、再度目にしたそこには木も葉も無いどころか、部屋は特に壁に亀裂がある程度で他に変わった様子はありません。
箪笥の上に置いていた目覚まし時計すら、しっかりいつもの位置に居座っています。
しかし、他の部屋は全ての物が落ち、割れて、何もかも普通な物などありませんでした。
震度七の揺れの中で、唯一私達家族が眠る部屋だけが穏やかな姿を保っていたのです。
未だにその木の姿を思い出す事はできますが、私はあの木が、部屋をしっかりも支えてくれて、大震災の揺れから私達を守ってくれたのだと思っています。
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