「きさらぎ駅」を尋ねるおじいさん
投稿者:MONO (1)
私が中学生の頃の話です。家から学校までは微妙に距離がありましたが、田舎のため電車など通っているわけでもなく自転車での登下校をしていました。
そんなある日の下校中の出来事です。朝は風もない良い天気だったのですが帰りは強風で、とても自転車をこいでいては疲れると友達と家までだらだらと自転車を引いて歩いていました。もともと人通りの少ない田舎であることに加えてその日は午前授業だったため、道も余計にがらりと空いていたのです。
そんななか車1台しか通れないような細道で車1台と出くわしたのです。その車は私たちの通学路をふさぐようにあらわれて、クラクションを鳴らしました。そうするとその人は車から降りてきました。
背筋の丸まった白髪の60代ぐらいのおじいさんでしたが、行動のせいかどこか正気にも見えず不審者かなと身構えていました。のそりのそりと近づくおじいさんはやがて口をゆっくりと開きました。
「きさらぎ駅はどこだ。」私たちにはとても検討がつきません。なぜならこのへんに駅はありませんでしたし、近隣の駅を考えても存在しない駅名です。県内にあるかすら怪しいとその時思いました。
わかりません、とこたえても「きさらぎ駅はどこだ。なぜこのへんのもんがわからん。」と問い詰めてくるばかりで友達の手をつかんで自転車に乗り、車の隙間を通って逃げました。後方を確認するとなにかをまとったようなどんよりとした顔でこちらをずっと眺めて、やがて対向から来た車が餌食にされていました。
後日調べてみると「きさらぎ駅」とはネット上の掲示板で生まれた都市伝説だったそうです。なぜあのおじいさんはきさらぎ駅を探していたのかはわかりませんが、見当もつかなかったあの時よりも見つけてしまったときのほうがずっと怖かった思い出があります。
異世界のおじいさん・・・