歩行者の事故が多い交差点
投稿者:東急バンズ (2)
短編
2021/12/29
18:56
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いつもより少し遠回りをした、仕事からの帰り道の話です。
歩きながら差しかかったのは、都内でも有数の交通量の多い交差点でした。
横断歩道はなく、広い道路を渡るには歩道橋を利用するしかありません。すっかり日も落ちた冬の寒空の下、走り過ぎる車のヘッドライトの眩しさに目を細め、駅に向かうため私は歩道橋の階段をのぼりました。
途切れることなく車が行きかう交差点の橋上を歩きながら、バイブレーションの鳴ったスマホの通知を確認しようと、カバンからスマホを取り出しました。カバンを肩にかけ直し、利き手に持ったスマホの液晶画面へほんの一瞬の間だけと目を落としたのです。
その直後、おろしていた左手に誰かに掴まれたような感触を感じました。
すれ違った人の手にぶつけて触れてしまったのだと思い、せめて会釈で謝ろうとすぐに振り返りましたが、後ろには誰もいません。
気のせいにしては、あまりにしっかりとした感覚が左手に残っています。不思議に思いつつ前に視線を戻し、ふと重大なおかしなことに気付きました。
私が歩いていたのは歩道橋の左端、手すりの際で、片側は人とすれ違うはずがなかったのです。
急速に背筋の冷えた私は、足早に歩道橋を後にしました。
その交差点は、横断歩道がないにも関わらず歩行者の死亡事故が絶えないそうです。
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